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対談

2018.02.20

女性活躍のその先を読む。自社にとって真のダイバーシティとは? ― Diversity & Inclusion Evangelist 蓮見勇太氏

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太田 由紀 Yuki Ota
太田 由紀 サイコム・ブレインズ株式会社
取締役

何のためのダイバーシティか?…デモグラフィ型/タスク型の両輪で考える

蓮⾒ 勇太 ⽒
  • 太田 由紀
    日本企業におけるダイバーシティ推進は、いわゆる「デモグラフィ型ダイバーシティ※」、その中でも「ジェンダー」あるいは「女性」にフォーカスされているのが現状だと思います。「女性管理職の比率を30%にする」といった数値目標もあります。一方で、その目標が達成されたら「ダイバーシティはもうOK!」ということになって、「何のためのダイバーシティか?」という議論が薄れてしまいそうで…。そうだとしたらすごくもったいないですよね。


デモグラフィ型ダイバーシティ…性別・国籍・年齢など、目に見えやすい属性による多様性
タスク型ダイバーシティ…実際の業務に必要な能力・経験・知見など、目に見えにくい価値による多様性

  • 蓮⾒ 勇太
    確かにそうですね。ただ、タスク型に加えて私はこのデモグラフィ型のダイバーシティも、両方すごく大事だと思っています。最初はどこの企業も「誰でも活躍できる会社にしよう」とか「組織のカルチャーをインクルーシブにしよう」といったダイバーシティにおける目的を掲げますよね。ではその「カルチャーがよくなった」というのは、どのように測るのか?…これはなかなか難しい。だから「ダイバーシティっていうけど、なんだかボンヤリしてるよね」となってしまう。

    ダイバーシティ推進の担当者として現場の人を巻き込むためには、やはり達成すべき数値目標があった方がいい。「女性の管理職が、外国籍の社員が、これだけ増えました!」と、営業の売上目標と同様、目に見える成果、タスク型ダイバーシティを測るKPIとして言えることも大事なのではないかと思います。
  • 太田 由紀
    企業の方とお話をしていると、特にトップの方は「ダイバーシティがStrong Companyをつくることに結びつかなければ意味がない」と非常に強く思っています。一方でトップより下の階層の方は、ダイバーシティがなぜ競争優位やイノベーションにつながるのか、いまいちピンと来ていないようです。

    だからこそ「タスク型ダイバーシティ」という視点が必要なのではないかと思うのですが、それをどう推進するのか、成果をどう測るのか。悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。
  • 蓮⾒ 勇太
    ダイバーシティは日本語にすると「多様性」ですが、それはどちらかというとデモグラフィ型ダイバーシティの方で、タスク型ダイバーシティは「多才性」なのではないかと思います。価値観とか才能とかスキルとか、そういうものが多才であり多彩である…と私の中で定義しています。

    では、そのタスク型ダイバーシティを見える形にするにはどうするか? 一つにはビジネスのプロジェクトベースで施策を行うのがよいと思います。たとえば私がAIGのときに関わったのは、障がいのあるお客さまやLGBTのお客さまに向けた生命保険商品やサービスの開発でした。死亡保険金を民法上の家族ではく、たとえば同性のパートナーでも受け取れるようにしたり、障がいのある方でも入ることができる保険を開発したり。LGBTや障がいのある方というのは、デモグラフィ型の属性ですが、そういった方たちに向けた商品を開発する、あるいは開発の際に当事者の意見を反映させるのは、タスク型ダイバーシティの一つの形といえるのではないでしょうか。
  • 太田 由紀
    なるほど。ビジネスに直結したプロジェクトにすることで、自社にとって必要なダイバーシティの真の姿であったり、その成果が見えやすくなる。従業員に対してどうあるべきか、顧客に対してどんな価値を提供できるか、そういったことを考える視点を得ることができますね。
  • 蓮⾒ 勇太
    現代は「不確実性の時代」とよく言われますが、何が正解かもわからないまま進めていくと、本質的なところがブレてしまいがちです。「ダイバーシティ」という言葉を繰り返し使っているうちに、「グローバル」とか「リーダーシップ」みたいなバズワードになってしまって、「太田さんの考えるダイバーシティと、私の考えるダイバーシティの意味が、実は違ってた!」みたいなことって、結構あるんです。なので、自社がダイバーシティを推進する目的、ベクトルというものを最初にしっかりと定義すること。そして従業員がこのダイバーシティを「自分ごと」として捉えることが重要です。その際にデモグラフィ型とタスク型、両方の視点が必要であると私は考えます。

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