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小西 功二
サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
現代のビジネス環境にあって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を改めて説く必要はないでしょう。ChatGPTの台頭を持ち出すまでもなく、「新しい価値」を感じる商品・サービスでデジタルが関連しないものは、もはや「ない」のではないでしょうか。そしてこれはB2Cに限った変化ではありません。
しかしながら日本の現状を省みても、残念ながら「DXは進んだ」とは言い難いでしょう。2018、20、21年と立て続けに公開された「DXレポート」「DXレポート2」「DXレポート2.1」には、DXで世界に遅れをとる日本企業に対する政府の焦りが見て取れます。多くの企業が必要性と重要性を実感しているはずなのに、DX推進が遅々として進んでいない。実態としては二極化しており、多くの企業は遅れている側にいることが危惧されます。
その理由は複合的で、企業各々の事情もあるでしょうが、突き詰めるとDX人材の不足に行き着きます。DX人材には、意思決定する経営者、後押しするマネジャー、推進するリーダー、そしてDXを受け容れて協力する一般社員をも含みます。つまり、広くDX人材が育成されていないのではないでしょうか。本コラムでは以上の問題意識に立って、どのようにDX人材を育成していくかについて、トレーニングベンダーとしての私見を述べます。
そもそもDXとは?DX人材とは?
そもそもDXとは、「デジタル技術を活用して得られたデータをもとに、製品・サービスや業務プロセス、時にはビジネスモデルまでをも変革し、新たな顧客価値を創造したり、競合優位を確立したりすること」です。DX人材の育成が難しいのは、このDXの定義に関連しそうです。
つまり、デジタル技術を理解し、データ分析や活用ができて、ビジネスにも精通するという、DX人材要件のハードルが高いのです。しかしながら、一口に「DX人材」といってもDXへの関わり方によって、求められる要件には濃淡が出ます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によると、DX人材は6種類に定義されます。①プロデューサー、②ビジネスデザイナー、③アーキテクト、④データサイエンティスト/AIエンジニア、⑤UXデザイナー、⑥エンジニア/プログラマーです(図表1)。
これら①から⑥までの人材定義は、DX推進の上流工程から下流工程にそのまま符合します。日本企業でDXが進んでいないのは、上流工程に位置する①人材から④人材の不足にも原因がありそうです。