- 勝 幹子グローバル研修グループ/シニアコンサルタント
レポート
2014.09.02
とある研修会社の展示ブース。写真は来場者が「良いリーダー」「悪いリーダー」の定義を書き込む大きなパネル。
今年のASTD国際会議では、「Agility(柔軟な対応力)」や「Adaptability(適応能力)」といった言葉を非常によく耳にしました。
元駐アフガニスタン米軍司令官のGeneral Stan McChrystalによる基調講演をはじめ、様々なセッションにおいてこれらの要素がリーダーに必要であると強調しています。また全体を通して「世界中で予測できない変化が次々と起こるようになった昨今、今までのリーダーに必要な要件をあらかじめ定めて評価するコンピテンシーモデルには限界がある」という論調が多く見られました。
さて、今回はAgilityを重視したリーダー育成の事例として、アメリカのインターネットオークション・通信販売企業、eBayが行っているプログラムをご紹介したいと思います。eBayではリーダー育成を三つの階層に分けて行っているそうですが、私が参加したセッションではミドルマネジャー向けのプログラムが特に詳しく紹介されていました。プログラムのポイントとして強調していたのは以下の3つの点です。
世界48か国の企業のリーダーの現状調査を報告するセッション。日本だったらものすごく関心を持たれそうなテーマであるが、参加者の少なさに驚いた。
ところで、ASTD国際会議で行われる250以上のセッションを分類する9分野の内、セッション数が一番多いのは「Training Design&Delivery(研修の設計・提供)」で約50。
次いで「Leadership Development(リーダーシップ開発)」で約30でした。
それでは、日本で皆さんが非常によく耳にする「グローバル人材」に関するセッションはどうでしょうか。今年の「Global Human Resource Development(グローバル人材開発)」に関するセッションは20弱。その内容も、韓国、中国、インドなどアメリカ以外の企業の事例発表で、参加者もアメリカ人ではなくそれ以外の国の方が多い印象を受けました。すでにビジネスリーダーといえばグローバルに活躍できることが織り込み済みであるアメリカ企業にとっては、わざわざそれだけを取り上げるというテーマではないのかもしれません。このことからも、「グローバルリーダー育成が喫緊の課題」となっている日本の特異性が改めて理解できました。
現在私は日本人社員のグローバル化や、多国籍社員への研修の企画の提案をしています。「グローバル人材の育成」という言葉は非常にあいまいなもので、この言葉だけに頼ってしまうと、育成における課題の本質を見過ごしてしまいます。今回のキーワードであるAgilityも含め、世界を舞台に活躍できるリーダーに求められる特性を、世界情勢、業界動向、そして個々の企業の戦略から、それぞれの案件ごとに明確に定義付けてゆくことが、顧客の皆様のご要望にお応えする第一歩であると、今回あらためて実感しました。
勝 幹子グローバル研修グループ
シニアコンサルタント
上智大学外国語学部卒業後、ウシオ電機株式会社に入社。人事部にて教育、採用関連業務に従事。その後、携帯電話向けソフトウェア開発をしている日系ベンチャー企業にて他企業との共同開発、共同プロモーションを推進するアライアンスマーケティングを担当。ビジネスに関する知識の増強と多国籍な人々の間でサバイバルする体験をしたいと考え、一橋大学大学院国際企業戦略研究科で2年間学び、MBAを取得。現在サイコム・ブレインズのグローバル人材育成グループにてコンサルタントを務める。デンマーク、スペイン、イギリス、韓国での滞在経験や、アジアへの興味を活かして、特に多国籍メンバーへの研修や新興国派遣研修の企画に力を入れている。
コラム
2021.07.30
コラム
2020.11.19
―The Culture Factor 2019 Conference レポート①
レポート
2019.12.24
―The Culture Factor 2018 Conference レポート
レポート
2018.11.06