Millennials(ミレニアル世代)と、学習における「バーチャル」と「リアル」のバランス
最初に、各セッションのタイトルなどから今年の全体的な傾向を探ったところ、たとえば「AI」のように、今後ますます注目されるであろうトピックもありましたが、全体としては「Microlearning」「Millennials」「Neuro-science」「Agile」といった言葉が目立ちました。実際、これらのキーワードはここ数年大きく変わっておらず、回を追うごとにコンセプトが具現化され、実践・実用した事例が積み重なってきている、という状況のようです。
そのような中で、次世代経営者の育成に関して今回非常に強く感じたこと。それは、「これからの選抜育成プログラムは、リアル(集合研修)とバーチャル(オンライン学習)のバランスを取りながら設計することが、ますます求められるであろう」ということでした。
次世代経営者の育成において選抜の対象になるのは、年齢層でいうと30代半ばが中心になるかと思いますが、Millennials(ミレニアル世代)がいよいよこの年齢層に入ってきました。この世代をいかにレベルアップしていくか。これは企業の人材開発において大きなイシューになっています。ITリテラシーが高いこの世代に適した学習スタイルとして、自分にとって重要かつ不足しているものだけを短時間で効率的に学べるMicrolearning、あるいは地理的に離れた学習者どうしがオンライン上でインタラクションを行うVirtual Classroomといった手法に注目が集まっているのも、こうした背景があります。
一方、今年のカンファレンスでは、Neuro-science関連のセッションでOxytocin(オキシトシン)という言葉が注目されました。Oxytocinは脳から分泌されるホルモンで、これが分泌されると相手への思いやりや信頼感が増し、組織の生産性を高めるといったことが期待されるそうです。オキシトシンがどのように分泌されるかは、まだ解明されていないことが多いのですが、たとえば握手をするなど身体的な接触、あるいはアイコンタクトや表情といった非言語のコミュニケーションもこのホルモンの分泌に影響するようです。
MillennialsやOxytocinの話題から私が考えたのは、「Millennialsの学習者の傾向をふまえて、MicrolearningやVirtual Classroomといった手法によって効率や効果を追求する流れの中にあっても、学習者どうしのリアルなコミュニケーション、あるいは体を使ったワークなどを通して、共感、信頼関係、組織の文化を構築するしくみは必要ではないか」ということでした。学習の場だけではなく、現場においてもメンバーとのリアルなコミュニケーションをすることの大切さを実感してもらうことは、ITに長けたこの世代だからこそ、特に意識するべき要素であると思います。