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コラム

2022.07.14

議論に白黒つけるのでも、グレーにするのでもない、「新しい色」を生み出すような場にしよう ~今、マネジャーに期待されるファシリテーターとしての役割(後編)

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
議論に白黒つけるのでも、グレーにするのでもない、「新しい色」を生み出すような場にしよう

日本企業の喫緊の課題である働き方改革、生産性向上、イノベーション創出、ダイバーシティマネジメントなどの領域において、ファシリテーションスキルに対する注目度が高まっています。ファシリテーションスキルとは、「集団による知的相互作用」を促進するための働きかけです。協働による問題解決やイノベーション創出、そしてチームビルディングなどの場において、参加メンバー同士の議論の触媒となるのがファシリテーターです。

本稿では、今、組織開発の領域において注目されているファシリテーションについて、ファシリテーターに求められる役割と、身に付けるべきスキルという2つの観点から整理したいと思います。

「それって結局、どういうこと?」で本質論に引き戻し、解決策の糸口を手繰る

前編では、「場の活性化」において、マネジャーがメンバーに問いかけることで、議論の内容に多様な観点をプラスするような、主張や意見の引き出し方や、疑問質問の取り回し方について解説しました。次に行うのが「整理・構造化」です。

フェーズ2:整理・構造化

フェーズ1の「問いかけ・引き出し」によって出てきた内容を「整理・構造化」していきます。このフェーズでは論理的思考力が鍵を握りますが、ここでは比較的簡単に、議論した内容を整理・構造化できるお勧めの方法をご紹介します。具体化と抽象化の往復作業です。つまり、先の「問いかけ・引き出し」のフェーズでは、基本的には議論の内容が「具体化」するような質問でファシリテートすることになりますが、「整理・構造化」のフェーズでは「具体化」と「抽象化」を繰り返します。発散した議論の内容を整理するためには、「それって結局、どういうことでしょうか?」「一般化すると、何と言えそうでしょうか?」「一言で表現するとズバリ何でしょうか?」という質問で、抽象化に舵を切っていくと良いでしょう。抽象化することによって、細かくなりすぎた議論をより本質的な議論に引き戻したり、問題解決の糸口となる重要なキーワードに昇華するなどの効果が見込めるからです。

抽象化ができたら、次に対立概念を使って問い直していきます。例えば「先ほど活動の“量”については一定の結論を得ました。では、活動の“質”についてはいかがでしょうか?」という具合です。対立概念はMECE(漏れダブりなく)に洗い出すのが基本で、「3C」「4P」といったビジネスフレームを活用すると効果的に整理・構造化することができます。こうした対立概念と深掘りの質問でさらに具体化させていきます。

具体化と抽象化の往復作業イメージ

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もう一つ、「整理・構造化」のフェーズで役に立つのが、常識を問い直す批判的精神です。人は誰でも経験に基づく無意識の偏見や固定観念にとらわれています。いわゆる「アンコンシャス・バイアス」です。これを崩すのは容易ではありませんが、その第一歩としては、「これってバイアスでは?」と、常に自問自答を繰り返すことです。議論の中で「○○たるもの、××すべき」のような「断定口調」が幅を利かせだした時は、バイアスのシグナルです。バイアスが見つかったら、積極的に物事の見方や捉え方を強制的に言い換えるような「問い直し」すなわち、リフレーミングを行いましょう。

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