今、なぜ“ファシリテーション”に注目すべきなのか
VUCA(※)な要素が年々強まるビジネス環境において、マネジャーが解決しなければならない問題は高度化し、複雑化しています。こうした状況に対処するためには、マネジャー個人の知識・経験・スキルのみに頼った問題解決アプローチでは限界があり、今後は協働による問題解決、すなわち多様な人材から多様な知見を引き出し、統合するアプローチが有効です。そして、そのアプローチをより効果的なものにするために必要なのが、ファシリテーションスキルなのです。
(※)Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確実さ)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ)の頭文字を取った造語で、現代のビジネス環境を表現するキーワードとして多用されるようになった。
組織やチームにおけるファシリテーションの重要性は、コロナ禍による急激なリモートワークシフトによって、さらに浮き彫りになりました。メンバー間で広がった物理的・心理的な距離が、組織・チームに遠心力となって作用する中、それを打ち消す求心力が求められています。求心力の核となるのは組織やチームの「ビジョン」であり「パーパス」かもしれませんが、それらをメンバーとコミュニケートし、チームを作るのは、マネジャーの力量であり、その成功のカギを握るのがファシリテーションスキルと言えます。
このように、今、ファシリテーションは、人に働きかけ、知恵を引き出し、それらを掛け合わせて新しい知を作る、極めて非定型的で創造的な、組織開発的アプローチとして注目されています。さらに言えば、人工知能(AI)に最も代替されにくいヒューマンスキルの代表格とも言えるのではないでしょうか。今後、マネジャーのみならずビジネスパーソン全般は、ファシリテーションスキルに磨きをかけていくことが求められているのです。