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小西 功二
サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
日本企業の喫緊の課題である働き方改革、生産性向上、イノベーション創出、ダイバーシティマネジメントなどの領域において、ファシリテーションスキルに対する注目度が高まっています。ファシリテーションスキルとは、「集団による知的相互作用」を促進するための働きかけです。協働による問題解決やイノベーション創出、そしてチームビルディングなどの場において、参加メンバー同士の議論の触媒となるのがファシリテーターです。
本稿では、今、組織開発の領域において注目されているファシリテーションについて、ファシリテーターに求められる役割と、身に付けるべきスキルという2つの観点から整理したいと思います。
今、なぜ“ファシリテーション”に注目すべきなのか
VUCA(※)な要素が年々強まるビジネス環境において、マネジャーが解決しなければならない問題は高度化し、複雑化しています。こうした状況に対処するためには、マネジャー個人の知識・経験・スキルのみに頼った問題解決アプローチでは限界があり、今後は協働による問題解決、すなわち多様な人材から多様な知見を引き出し、統合するアプローチが有効です。そして、そのアプローチをより効果的なものにするために必要なのが、ファシリテーションスキルです。
組織やチームにおけるファシリテーションの重要性は、コロナ禍による急激なリモートワークシフトによって、さらに浮き彫りになりました。メンバー間で広がった物理的・心理的な距離が、組織・チームに遠心力となって作用する中、それを打ち消す求心力が求められています。求心力の核となるのは組織やチームの「ビジョン」であり「パーパス」かもしれませんが、それらをメンバーとコミュニケートし、チームを作るのは、マネジャーの力量であり、その成功のカギを握るのがファシリテーションスキルと言えます。
このように、今、ファシリテーションは、人に働きかけ、知恵を引き出し、それらを掛け合わせて新しい知を作る、極めて非定型的で創造的な、組織開発的アプローチとして注目されています。さらに言えば、人工知能(AI)に最も代替されにくいヒューマンスキルの代表格とも言えるのではないでしょうか。今後、マネジャーのみならずビジネスパーソン全般は、ファシリテーションスキルに磨きをかけていくことが求められているのです。