対談

2018.03.02

人事部の変革、人事担当者の自己改革 ― 八木洋介氏に聞く、会社を変えたい人事パーソンへの処方箋(後編)

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江島 信之 Nobuyuki Ejima
江島 信之 サイコム・ブレインズ株式会社
取締役執行役員
人事部の変革、人事担当者の自己改革

サイコム・ブレインズが毎年開講している「次世代戦略人事リーダー育成講座」。参加者の全体的な傾向としては、「人事からもっと発信して、会社を変えていきたい」「オペレーティブな仕事だけではなく、もっと戦略的な施策をやってみたい」という意志を強く感じます。その一方で、それぞれの職場では「総論賛成・各論反対」といったように、理想と現実の間でジレンマを抱えている人も多いようです。戦略人事というコンセプトが広く認知された今、個々の人事担当者がこのジレンマを乗り越えるためには、何が必要か。八木洋介氏にお話を伺います。

八木 洋介 氏
八木 洋介氏
株式会社people first代表取締役/サイコム・ブレインズ株式会社顧問

1955年生まれ。1980年に京都大学 経済学部 卒業、1992年にマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院MS取得。1980年に日本鋼管株式会社(現JFEスチール株式会社)入社。1996年から1998年までNational Steel Corporationに出向(CEO補佐)。1999年に GE横河メディカルシステム株式会社入社。2002年から2004年までGE Medical Systems Asia、2005年から2008年までGE Money Asia、2009年から2012年までGE Japanにて責任者として人事などを担当。2002年より日本ゼネラル・エレクトリック株式会社取締役。2012年 株式会社住生活グループ(現 株式会社LIXILグループ )執行役副社長 人事・総務担当。2017年株式会社people firstを設立して、代表取締役(現任)。2017年株式会社ICMG取締役 及び 株式会社 IWNC 代表取締役会長(現任)。経済同友会幹事 新産業革命と規制・法制改革委員会副委員長。著書に「戦略人事のビジョン」。

「軸」と「設計図」をもってパラダイムシフトに備えよ

八木 洋介 氏
  • 江島 信之
    八木さんが、Google人事部トップのラズロ・ボックが書いた『WORK RULES!』をLIXILの人事部全員に配布してアイデアコンテストをした、というお話を以前ネットの記事で読みました。これも「何かを大きく変えよう!」ということではなくて、小さな変化を狙ってのことだったのでしょうか?
  • 八木 洋介
    ラズロ・ボックはものすごく勉強している人です。勉強だけじゃなくて、とにかく現場で実践を繰り返しています。本を配ったねらいは色々とありますが、LIXILの人事部の皆にも「勉強をして実践していくことが大事だ」ということを感じて欲しかった。
  • 江島 信之
    八木さんは、「人事は勉強不足だ」とよくおっしゃっていますね。ちなみに、今人事の方が勉強すべき分野って何でしょう?
  • 八木 洋介
    社会心理学、行動経済学、脳科学…あとはAIとか。パラダイムシフトを起こしそうなテクノロジーであったり社会の変化。そういうメガトレンドは、会社をリードする立場に行こうと思っている人は勉強しないとだめですね。メガトレンドによって世界がどう変わるのか。会社のビジネスに対してどんなインパクトがあるか。それぐらいのことは考えられるようになった方がいいです。
  • 江島 信之
    ソフトバンクが採用エントリーシートの選考でAIを使うとか、みずほフィナンシャルグループがAI導入で1万9千人を人員削減とか、「もう少し先だろう」と思っていたことが、あっという間に現実になっていますからね。
  • 八木 洋介
    たとえばGoogleの新しいスマートフォン。あれは日本語で話すと50カ国語に翻訳するというものだけど、これによって何が起こるか? 東京大学の松尾豊先生が「日本人も言葉の壁から解放される時代が来た」とおっしゃっているのを何かの記事で読んだけど、逆もまた真で。日本人じゃない人たちが、日本に対して言葉の壁を感じない時代になる。日本をマーケットとして面白いと思う人たちが世界中から来る、ということです。ぼーっとしていたら負けてしまいますよ。
  • 江島 信之
    昨年、私はATDの国際会議に参加したのですが、ラーニング・テクノロジーの進化もさることながら、脳科学というものが人事や人材開発においてより実用的なものになりつつある、ということを知ることができました。八木さんはこの脳科学と人事の関連については、どのようにお考えですか?
  • 八木 洋介
    心理学で言われていたことがどんどん脳科学で証明されつつあります。人間の行動が科学として証明されつつある今、それを学ばなければ学んでいる人に勝てるわけがありません。例えば、「人間はいくつになっても変わり続けることができる」ということが脳科学で分かってきている。「この歳になったらもう変わらないから…」とか言う人いるでしょ。でもそれは完全に間違いなんです。人は変わりたいと思って行動すれば変われるということが、科学的に証明されているんです。だから私が講師をする研修では「自らの設計図を描きなさい」と伝えています。
  • 江島 信之
    「設計図」ですか。それは具体的にどういうものでしょう?
  • 八木 洋介
    「自分はこういう生き方をする」ということ。僕はそれを「軸」と呼んでいるけど、自分の生き方、物の考え方をちゃんと持つこと。「信頼される人になりたい」というだけでは、軸にならない。どうしたら信頼されるかを考える。考えれば「嘘をつかない生き方をする」という「軸」が見つかる。そういうものを自分の中で見つけて生きていきなさい、ということです。

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