コラム

2015.02.25

研修アテンドから見える組織の課題

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

皆さま、こんにちは。第1回のコラムで、弊社コンサルタントの業務フローをご紹介しましたが、その中の『研修終了後、実施レポートを提出する』という最終フローについて、今回はお話ししたいと思います。

研修実施レポートの意義は、研修を通じて垣間見えた組織の課題についての仮説をお客様に「ぶつける」ことです。それによって、お客様の自社の課題に対する認識が深まる、あるいは認識を新たにしていただけると信じているからです。
もっとも、研修実施レポートは『組織診断』と言えるほどの網羅的な情報収集と精緻な分析に基づいてはいません。しかしながら、我々コンサルタントが研修現場に立ち会って、実際に受講者の行動を観察し、生の声に耳を傾けて得た情報に基づいています。そうして得られる見解は、相応のインパクトがあると考えています。

また、研修という場は、組織の強みや弱みに関する傾向が出やすくなります。なぜならば、受講者はある一定の基準に沿って集められているからです。一般的に研修対象者は、企画、開発、マーケティング、調達、製造、物流、営業、管理など職種で分けた上で(部門横断的研修を除く)、さらにマネージャー、中堅社員、新人などポジションで分けて集められます。つまり、受講者はセグメンテーションされており、組織内で同一の属性や研修ニーズをもつ集団です。従って、特定の傾向が現れやすいのです。コンサルタントはその傾向に着目し、組織課題に対する仮説を立て、対策案を添えてレポーティングします。

仮説立案のアプローチは2通りしかなく、帰納法と演繹法です。帰納法とは、観察された事実の積み上げから結論(法則や原理)を推論する方法です。当社研修の場合、1クラス20人前後の受講者を数日間、企画によっては数回にわたって観察できるため、結論は一定の説得力を持ちます。
ただし、研修という人工的につくられた場での受講者の言動をどう解釈するかという限界も残ります。また、帰納法の場合は事実の解釈が命です。「それで何が言えるの?」という問いに鋭い踏み込みがないと、つまらない結論を提示することになります。要するに、あまりに無難な推論だと「意味あることは何も言っていない」状態になり、そうかと言って大胆すぎると「言い過ぎ」になります。

そうした限界を補完するのに便利なのが、演繹法です。演繹法とは、既に確立されたルール、一般論に観察事項を当てはめて結論を推論する方法です。我々は仕事柄、様々な業種・業態、規模の会社の研修に立ち会わせていただくので、経験値を蓄積しています。その経験値から生まれた経験則に照らして、観察事項を解釈するのです。
ただし演繹法にも限界があります。経営学は物理学とは違いますので、ルール、一般論の普遍性が必ずしも担保されていません。つまり、「その経験則はお客様企業に当てはめてよいものか」あるいは「そもそもその経験則は正しいのか」という限界です。
さらに言えば、帰納法にしろ、演繹法にしろ、観察された事象と推論による結論との間の因果関係を見極める必要がありますが、そもそも現実世界はそれほど単純ではありません(変数が無数にある)し、単なる相関関係を因果関係と錯覚することもあり得ます。

では、何も言わないのが良いのかと自らに問うと、そうではないと断言できます。我々は、限られた情報であったにせよ、そこから推論される組織課題の仮説をお客様に「ぶつけて」こそ、考える材料を提供することができ、そのことに意義があると考えています。コンサルタントは、そのために観察眼と思考力を磨かなければならないと考えています。

次回は、営業報告書の意義について考えてみたいと思います。

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