東京都主催の中小企業向け外国人採用・活用セミナーで、サイコム・ブレインズ株式会社の金栗雅実が、「異文化マネジメント」をテーマとした80分の講演と「海外グローバル人材の採用と今後の可能性について」をテーマとしたパネルディスカッションに参加しました。
講演:「異文化マネジメントについて」
■異文化マネジメントが必要な理由
80分の講演の中で金栗は、まず世界の人とうまく付き合うために求められる能力要件として、「高い専門性」「コミュニケーション力」「異文化への適応力」の3つをあげました。高い専門性とは、業界や職務に関する知識、組織のマネジメントスキルなどで、コミュニケーション力は語学力や相手を説得する力などです。異文化への適応力は、異文化環境では自分の常識では予想もしていないこと起こることがよくあるが、そのような場面に直面した際、慌てず、感情的にならず一歩引いて対応するタフさと柔軟性のことをいいます。
同じ文化や国での仕事環境であれば、「高い専門性」と「コミュニケーション力」が備わっていれば「優秀な人」と高い評価を受けるのですが、国内では優秀な人でも国境を越えて仕事をする場合、「異文化への適応力」がなければ高いパフォーマンスが出せない、つまり、グローバルに仕事をしたり、異文化を受け入れて外国人材を活用するにためにか欠かせない重要な要素と言えます。
■異なる文化を読み解くツール「ホフステードの6次元モデル」
では、どうすれば異文化の適応力を高めることができるのか?
そのためには、自分の常識と違った行動をとる外国人を「悪い」と捉えるのではなく「違う」という観点で捉え、なぜその違いが生じるのか、その違いの根本にある相手の感情や行動の意図を正しく読み解けるようになる必要があるということを金栗は述べ、そこで活用できる有効なツールとして「ホフステードの6次元モデル」を紹介しました。
「ホフステードの6次元モデル」とは文化人類学者のヘールト・ホフステードが約11万人を超える調査結果をベースとして導き出した各国の国民文化の傾向を読み解くためのツールのことを言います。
このツールでは各国の6つの次元(価値観)を0から100の数値で相対的に表すことで、それぞれの国の価値観の差を明確にすることを可能としました。
6つの次元(価値観)*は、次のとおり。
- 1) 権力格差(PDI)が大きいか・小さいか
- 2) 集団主義か・個人主義か(IDV)
- 3) 達成、極める、秀でることを重んじる「男性的文化」か、生活の質や弱い者への同情を重んじる「女性的文化」か(MAS)
- 4) 不確実性の回避が高いか・低いか(UAI)
- 5) 実用主義–実用的か規範的か(PRA)
- 6) 人生の楽しみ方–充足的か・抑制的か(IVR)
*参照:Hofstede Insights(https://www.hofstede-insights.com/)
このツールを活用することで、各国や地域の価値観を客観的にとらえることが可能となると同時に、仕事現場においてのコミュニケーションの取り方のヒントを見出すことが可能となります。
例えばアジア圏の国々では、権力格差が大きく、集団主義の傾向が強いため、一般的に
アジア人部下のマネジメントにおいて上司として家父長的な態度を取り、かつ集団の前で個人に対して強い批判をすることを避けることが求められます。
また、個人主義の傾向が強く、男性性も高いアメリカでは人よりも優れていて、個人としてNo1を良いものとする傾向があることから、社員をモチベーションづけする方法として、個々に対する賞賛の仕方がワークしやすくなります。
このように、6次元モデルの数値と照らし合わせながら異文化の人達と仕事の場で接する上でのポイントが複数挙げられました。
パネルディスカッション:「海外グローバル人材の採用と今後の可能性について」
■外国人材の採用と組織のイノベーション
後半のパネルディスカッションでは金栗に加え、前半別テーマにて講演したASIA to JAPAN代表取締役社長の三瓶正人氏、モンスター・ラボ執行役員の椎葉育美氏の3名が「海外在住グローバル人材の採用」をテーマに司会者からの質問に答える形式で話をしました。
そこでは、日本人採用と外国人採用の選考プロセスの違いや、外国人社員のモチベーションの上げ方・見極め方、日本人と外国人の新入社員の受け入れ方の違いなどにつきそれぞれが発言。
その中で、「外国人材が増えることでイノベーションは起きるのか?」という司会者からの質問に対し、「価値観が違う⼈が集まり多様性が増すため、イノベーションが⽣まれやすくなる」と⾦栗が発言、⼀⽅で「意思決定者が新しい考えや発想を吸い上げなければ表⾯に出ないので、そのための仕組み、意思決定プロセスやシステムが必要」ということ強調し、そのためには「⼀歩引いて状況を俯瞰し、組織全体で違う価値観を受け入れるための姿勢が求められる。そのためには忍耐はある程度必要。異⽂化への理解を組織全体に広げて意識改⾰をすべき」と外国⼈材活⽤にあたって今後の課題をまとめました。