対談

2019.11.27

「DX人材」のコンピテンシーって、言語化できますか? ― 人材アセスメント、組織サーベイの今とこれから(前編)

  • b! はてぶ
江島 信之 Nobuyuki Ejima
江島 信之 サイコム・ブレインズ株式会社
執行役員

「イノベーション人材」「DXができる人」を探して来い!と言われたら?

  • 江島 信之
    ​360度フィードバックをするときに、「評価」と「能力開発」いずれの目的の場合も、自社のビジョン・戦略・行動指針などにひもづいた評価項目、いわゆる「コンピテンシー」を作って欲しい、といった話も多いですね。そういったことは従来は組織人事のコンサルティング会社の仕事でしたが、今ではサイコム・ブレインズのような人材・組織開発、キャリア開発の会社にも相談が来るようになりました。それはおそらく、最終的な行動変容につなげるためのソリューションを多く持っているからだと思います。

    その会社独自のコンピテンシーをクライアントと一緒に考えていく中で、時代の変化を感じることも多いです。たとえばシステム会社のセールス。RFP(提案依頼書)が出てヒアリングして提案して受注して…というスタイルから、顧客と一緒にビジネスを創って、そのうえで「システムは弊社のものを使ってください」というモデルに変わってきています。あるいは製薬会社のMRであれば、ジェネリック品にシェアを取られたり、病院・医師への訪問に対する規制が強化されたり、環境がどんどん変化して、より高い付加価値を提供しなければ生き残れなくなるわけです。「これが○○のコンピテンシーだ」と思われていたものが、必ずしも役に立たなくなってきて、じゃあどんなコンピテンシーが必要なの?というのを模索しているのだと思います。岡さんもそういう変化を感じることはありませんか?
  • 岡 祐介
    そうですね。おそらく業種・業態に限らず、今までは会社のステータスやブランド、あるいは実績とかだけを見て判断されていたところが、「アイデア力」とか「創造力」をもって顧客に解決案を出さなければならない。そういった仕事を一緒にしていける人が評価されるようになってきている、というのは感じますね。
  • 江島 信之
    我々のようなコンサルタントの側も、そういった新しいコンピテンシー、行動要件を測定可能なものにするために、具体的な言葉に落とし込むスキルが求められていると思います。サイコム・ブレインズは今年の7月からヒューマン・アソシエイツ・ホールディングスにジョインしましたが、グループ会社のエグゼクティブサーチファームの執行役員の方と話をしていると、以前は「このスキルを持った人をください」というのがクライアントの社長からの依頼であったところが、今だと「イノベーションを起こせる人材が欲しい!」とか、「デジタル・トランスフォーメーション、DXビジネスができる人を探してくれ!」という話が出るのだそうです。
  • 岡 祐介
    なるほど。ただそのキーワードだけでは漠然としているわけですね。
  • 江島 信之
    そうなんです。当然ですが、漠然としたままでは人材を探すことができないし、探してきた人材の評価もできない。だからクライアントも我々も「DX人材って何?」みたいなところから一緒に考える。あるいは実際にDXの領域で活躍している人にインタビューをしながら、コンピテンシーを作り上げていく必要が出てきたわけです。
  • 岡 祐介
    私も現場に行ってお客さまとお話していると、最初は結構かっちりとした要件定義書みたいなものを作ってくださるのですが、最終的にそれとはガラッと変わったものになるケースも多いです。お客様ご自身でも、求めていることがどんなものなのか、まだ分からないけど、今ある情報でなんとか要件を定義をするんです。一方で、「もしかしたら全く違う方法が他にもあるかもしれない」ということに気づいてはいるけど、言語化できない。我々としてそこにちゃんと目を向けてさしあげるというのが、すごく大事なんじゃないかなと思います。

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