レポート

2019.12.24

企業カルチャーを変えたい、そのための議論に必要なこと ―The Culture Factor 2019 Conference レポート①

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勝 幹子 Mikiko Katsu
勝 幹子 サイコム・ブレインズ株式会社
執行役員 / シニアコンサルタント

「アジャイルでイノベーティブな銀行」の文化って、どんなもの?

ホフステード博士の功績のうち一番有名なのは「国別文化の数値化」ですが、実は「組織文化の数値化」においても研究成果を上げています。Hofstede Insightsでは、この組織文化を数値化するオンラインサーベイ、それに基づく各種レポート、コンサルティングを年間約200組織に提供しています。今回は私が参加した『The Balancing act in Finance, Innovation vs. Compliance』という、金融会社が多く集まるルクセンブルクを意識した組織文化のセッションの内容を紹介したいと思います。

『The Balancing act in Finance, Innovation vs. Compliance』の
ファシリテーターを務めたPiotr Gryko氏。ポーランド出身で
スウェーデンに20年滞在した後、ポーランドのEU加盟を機に帰郷。
激動のヨーロッパを身をもって経験されています。

このセッションでは、最初に組織文化の変革を目指す銀行のケースが提示されます。法令による縛りが非常に厳しい銀行ビジネスですが、最近の環境変化に対応するためにもっとアジャイルでイノベーティブなサービスを発想できる体質にしたい。そこで今後3年間で企業文化を変えていく戦略が発表された…というストーリーをもとにディスカッションを進めます。

ディスカッションのお題は、「この銀行が目指すべき最適な組織文化はどのようなものか?」でした。ディスカッションでは「オープンマインド」、「協力的」といったイメージを語る人から、「様々なバックグラウンドの人を採用する」「部門間の人事異動を増やす」など具体的な「To Do」を語る人、あるいは「すべての関係者に意識を向けるようになる」「欲しい情報は自分で取りに行く積極性が必要」といった精神論を語る人まで、様々なアイディアが出てきました。「これをどうまとめるのかな?」と思っていると、ファシリテーターは次のようにコメントします。

――皆さんご覧の通り、最適な組織文化といっても共通理解を得るのが大変むずかしいのです。ですから組織文化の変革を進める最初のポイントは、みんなの認識を合わせることなんです。つまりアセスメントやサーベイ、外部の人のコメントを取り入れることに意味があるんです。

このコメントによって、組織文化をサーベイで数値化し、その後のディスカッションの「目線合わせ」に活用することの重要性を体感させるエクササイズだったことが種明かしされ、参加者一同「なるほど!」と納得しました。ちなみに私がいたグループは、アメリカ軍向けのプログラムを作っているというエンジニア、ルクセンブルク商工会議所のメンバー、銀行の職員というメンバーでした。それぞれの意見をまとめるのに苦労した直後だったので、あらためてサーベイ結果からスタートしてゴール地点を見える化することが重要であると素直に実感しました。

セッションでのディスカッションの様子。初対面どうしですが
「文化に興味がある」という共通項があるのですぐに白熱した
深い議論が展開されました。

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