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勝 幹子
サイコム・ブレインズ株式会社
取締役執行役員
研修テーマとして非常に多くご要望をいただくものが、リーダーシップ強化、マインドチェンジ、そして組織力向上の3つです。この中でも特に、コロナ禍を乗り切るため、組織力を高めることについての企業の関心が高まっているようです。今回は、会社やチームの組織力をどのように向上すればよいのか考えてみたいと思います。
高級ホテルとビジネスホテルとでは、「組織力」の中身が違う
まず、組織力とはそもそも何でしょうか?辞書で調べると、「組織がまとまって動く時に発揮される実行力、また、他に与える強い影響力。組織の持つ力」*という定義が出てきます。多くの人は「このチームは、仲が良い」「結束力がある」のように、組織の「まとまって動く」部分のみで組織力を評価しようとします。しかし、定義にあるように「実行力」、すなわち戦略実行力が発揮されてこそ「組織力」があると言えるのです。つまり、組織力の高さ・低さを評価するためには、「まとまる力」に加えて「戦略を実行する力」についても見ていく必要があるのです。
「戦略を実行する力」には、様々な要素が関連しますが、単に、知識やスキルをもった優秀なメンバーを集めるだけではこれを高めることはできません。チームスポーツなどにおいては、一流のメンバーを集めたドリームチームが、格下のチームに対し、個々の能力では勝っているにも関わらず敗れてしまう、といったことはよくみられる現象です。では、「戦略を実行する力」をどうすれば高めることができるのでしょうか。その鍵となる要素がチーム・組織が持つ考え方や価値観です。
例えば、富裕層を対象とした高級ホテルと、出張先での利用を期待しているビジネスホテルとでは、従業員が持つべき価値観が異なります。高級ホテルの従業員には、個々のお客様のご要望を察知し、マニュアルにないサービスまで提供する高いホスピタリティと柔軟性が求められます。一方、ビジネスホテルの従業員には、低価格でサービスを提供するためマニュアル通りに効率よく業務を進めることが求められます。このように、組織の従業員がもつ価値観が、リーダーの方針や企業の戦略と同じ方向を向いていることが戦略を実行する力を高める鍵となります。
*小学館「デジタル大辞泉」より