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小西 功二
サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
コロナ禍で多くの企業がリモートワークに移行しました。緊急事態宣言の解除に伴い、出社への揺り戻しも起きましたが、第3波の襲来と共に、リモートワークに逆戻りという企業も少なくありません。既に、企業にとっても従業員にとっても、リモートワークには一定のメリットがあることが実感されており、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えても、完全リモートもしくはオフィス勤務と組み合わせながらのリモートワークは、定着していくものと想定されます。一方で、慣れないオンライン環境や、個人作業に戸惑い、なかなか思うようなパフォーマンスが出せず、疲弊している従業員も少なからず存在します。リモートワークが長期化し、定着していく今後、企業はこの問題に対処していく必要があるでしょう。今回のコラムでは、リモートワーク下におけるメンバーマネジメントはいかにあるべきか、その要諦と具体的なアクションについて、考察したいと思います。
周りが見えない。自分の立ち位置もわからない。入社8か月のA君の場合
リモートワーク化によるマネジメント課題の変化を考える上で、まず、コロナ感染拡大の年であった、2020年に入社した、とある新入社員「A君」のストーリーを見てみましょう。
- コロナ元年入社のある新入社員「A君」のストーリー
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私は、2020年4月に大手IT企業に入社した22歳の新入社員です。コロナの感染拡大を受け、弊社は3月より全社的に在宅勤務体制を導入しています。そのため、2020年入社である私たち新入社員の入社式や新入社員研修はすべてオンラインでの実施となりました。
入社日以降、支給されたPCに向かい、自宅で一人、課題に取り組む日々が続きました。50人いる同期とは、オンライン懇親会以降あまり接点がもてず、入社から半年以上過ぎた今も、いまだに顔と名前が覚えられません。研修期間を経て、5月のゴールデンウィーク前に配属されましたが、配属の挨拶も自宅からPC越しに行いました。5月末に緊急事態宣言が解除されましたがその後もリモートワークは継続されています。
職場の上司先輩は親切ですが、離れた距離からでは、何をしているのか、全容が掴めません。オンラインで朝礼と夕礼が毎日ありますが、画面OFF状態で表情が見えない人もいる中、質問しづらい雰囲気があります。仕事は上司から細かく割り振られているので不明点はありませんが、いまいち全体像が分からないまま作業を続けています。オンラインでの面談、打合せが隙間なく詰め込まれるため、自分の作業に取り掛かれるのは、夕方近くになることもざらにあります。業務報告は週一で行っていますが、結果だけを評価されています。
大きな不満があるわけではありませんが、ふと、一体自分はどこに向かっているのかと、不安になることがあります。昨日、同期で5人目の退職者が出たと聞き、とても残念です。12月に入ってからは都内の感染者数の増加が止まらず、警戒度レベルが「最高」に引き上げられる中、リモートワークは来年も継続しそうです。私の不安が払しょくされる日はいつになるのでしょうか…。
上記の例はフィクションですが、この新入社員が仮にあなたの部下だとしたらいかがでしょうか。コロナ以降、メールやウェブ会議システム中心のリモートワークに切り替わったことで、このような部下をもつマネジャーの悩みは深まっています。互いの仕事ぶりや業務のプロセスが見えず、結果だけが見える状況下で、評価を含めたマネジメントがやりづらくなった、と多くのマネジャーが感じています。「A君」のように、部下が、仕事の全体感が見えないストレスや不安を感じている場合は、モチベーションが下がったり、体調を崩してしまったり、最悪の場合は、離職をしてしまうケースも考えられます。また、このような状況に対し、多くのマネジャーは有効な手を打てていないように見えます。