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コラム

2020.12.22

ひとりで働く、離れて働く。つかみどころのない不安をどうするか? ~リモートワーク環境下のマネジャーに必要なこと(前編)~

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

リモートシフトで私たちは何を見失っているのか?

このように、多くの職場で起こっている状況を整理してみると、リモートシフトで浮き彫りになった組織の課題として、以下の5つがあることがわかります。

第一に、ひとつひとつのタスクを実施する時間の単位が小さくなり、1日の時間の使い方、タイムマネジメントが以前より複雑になりました。オンライン上で業務・コミュニケーションが完結し、移動時間などの制約がないため、様々なタスクを1日に詰め込むことができます。一方で、細かく詰め込まれたタスクを、1日の総時間や締切を意識しながら管理する、といった、これまでにない難しさが生じるようになりました。オンライン会議やミーティング、顧客やベンダーとのオンライン商談が目白押しで、個人の業務は短い隙間時間でこまぎれに取り組む、という方も少なくないのではないでしょうか。

第二に、職場での雑談が失われ、メンバー間の人間関係や一体感が希薄化し、ひいては組織への帰属意識やエンゲージメントが低下しました。特に、この環境下で、新入社員や中途入社メンバーがチームに馴染み、信頼や協力関係を育み、ひいては組織へのロイヤルティを高めるのは、至難の業と思われます。

第三に、仕事のオンとオフの境目が、時間的にも空間的にも曖昧になりました。自宅で勤務をしていると、タイムカードを切る、オフィスを出る、といった、わかりやすい出退勤の区切りがないため、責任感の強い社員ほど、抱えた業務量に応じて気づけば際限なく残業を行っていた、ということがあるかもしれません。一つ目の課題でも述べたように、オンラインでの会議や商談を隙間なく詰め込んで(あるいは詰め込まれて)しまっているようなときは、個人の業務は夜間や休日にせざるを得ないこともあるでしょう。いつまでも、目の前のPCの通知やメールをチェックし続けてしまい、なかなか業務に区切りをつけられない人もいるかもしれません。オフィスで衆人環視の下、労務管理されているわけではないため、そういった状況に陥りやすいと言えます。

第四に、学習機会が失われがちです。上司や優秀な社員の仕事ぶりを見て学ぶ、あるいはダイレクトに教えを乞う、または、ちょっとした協働の機会から「ああ、そうすればいいのか」と特定のタスクのティップスを学ぶ、という経験は誰しもあるものです。ところが、リモートで、社内の誰とも物理的に接触することなく、個人作業に集中していると、他のメンバーから見て学ぶ、訊いて学ぶ、共に学ぶという機会が失われがちです。

そして最後に、自分自身や、チーム、組織が、どこに向かっているのかを見失いがちです。3つ目の課題でも述べましたが、リモートワークは大抵が孤独な空間での個人作業であり、同僚やチームが今どのように動いているのか、組織で何が起きているのか、といった情報がどうしても見えづらくなります。冒頭の新入社員「A君」のように、自身が関わる業務や案件の全体像がつかめないまま、目の前の仕事にひたすら取り組むケースもあるかもしれません。一人きりで、仕事に没頭、没入していると、ふとした時に、「一体、私は(我々は)何を目指しているのだろうか」「正しい方向に向かっているのだろうか」と、我に返る瞬間が訪れないとも限りません。悶々と、孤独に悩むビジネスパーソンも増えているのではないでしょうか。

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