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今矢 敦士
サイコム・ブレインズ株式会社
コンサルタント
昨年4月の緊急事態宣言の発出から1年以上の月日が経ちました。その間、多くの企業が様々な変化を経験してきましたが、それは人事にとってもチャレンジの連続の日々だったのではないでしょうか。リモートワークへの移行はその代表的な事象です。そこではインフラの整備だけではなく、離れて働く社員、直接会えない社員に対するマネジメントの課題も顕在化してきました。一方で、今回のように予想もしない事態におかれたときに、人事としてどのようなスタンスで人と組織の問題に向き合うのか、ということをあらためて考えるきっかけにもなったのではないでしょうか。そこで今回は、サイコム・ブレインズの「次世代戦略人事リーダー育成講座」の卒業生の3名にお集まりいただき、人事として直面した今回の環境変化をふまえて、あらためてそれぞれがもっている人事観について、お話をお聞きしました。
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岡本 弘基 氏
株式会社セールスフォース・ドットコム
Employee Success Business Partner
Senior Manager, Employee Success -
高尾 千香子 氏
ジョンソン・エンド・ジョンソン
日本法人グループ
Business Unit HR -
谷 圭一郎 氏
資生堂ジャパン株式会社
人事部 制度企画グループ -
今矢 敦士
(進行役)サイコム・ブレインズ株式会社
ソリューションユニット コンサルタント
なりたいポジション、やりたい仕事を手にするための経験や視点を得る。人事が社外に学びを求める理由
- 本日は、お集まりいただきましてありがとうございます。まずは皆様、自己紹介をお願いします。
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セールスフォース・ドットコムの岡本です。
私は大学院中退後、米軍基地に就職したのち、外資系2社で人事業務を経験してからGEに入社しました。さらに、GEで人事オペレーションに7年携わったのち、2018年9月にセールスフォース・ドットコムに入社しました。現在は、同社人事本部で、営業部門と、アライアンスパートナー部門、そして、ビジネスオペレーション部門のビジネスパートナーをしています。現在ミッションとして力をいれている事は二つありまして、一つはEquality(平等)の考え方を、採用や報酬などに入れ込んでいく取組みです。人事を科学的にデータ化して平等が組み込まれているかを見ていきます。もう一つは「Success Anywhere」、つまり、全社員がコロナが収束したあともフレキシブルな働き方ができるための正解を探しています。
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ジョンソン・エンド・ジョンソンの高尾です。
私はもともと広告会社でプランニングをしていて、その頃から、チーム力の強化やエンゲージメントの向上に興味を持ち、現場でメンバーの能力開発やトレーニングを始めていました。その後、ジョンソン・エンド・ジョンソンへの転職を機に人事に移りました。現在は、同社のコンシューマー・ヘルス部門というバンドエイドなどの消費材を扱う部門で担当人事をしています。当社が外から企業を買収する、リーダーが変わるなどして組織の戦略が大きく変わっている中、社員のマインドやパフォーマンスをどうするか、企業文化を含めて考えることがテーマです。また、日本事業で行っている女性活躍のプロジェクトも担当しています。
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資生堂の谷です。
私は、大学卒業後、電力会社に入社し、その後ジョンソン・エンド・ジョンソンに転職し、人事になりました。さらに、その後コンサルティング会社を経て、現在の資生堂に入社しました。現在は、同社人事部の制度企画グループで、社員の人事制度の企画、立案、運用を担当しております。直近の取り組みでいうと、当社がグローバルでグレードを統一していく動きがあり、このグレーディングをどのように現行の人事制度に入れ込むか、グローバルの軸に対してどう日本をアラインするか、などの検討に注力しています。
- ありがとうございます。私は新卒でIT系の会社に入り、システム開発の案件を担当していました。当時、その会社では研修が全くなかったため、能力開発を企業が支援してくれたらいいなという思いから、企画する側としてやってみたいと思い始め、3年前にサイコム・ブレインズに転職しました。今はインサイドセールスの部門でコンサルタントをしながら、「次世代戦略人事リーダー育成講座」の企画・運営も担当しています。皆様には、本講座にご参加いただきましたが、参加された動機、参加して得たことなどがあれば是非教えてください。
- 当時、私はGEに在籍していましたが、その時の上司から打診されたことが受講のきっかけです。ちょうど、次のキャリアについてHRBPになりたいと考えていたタイミングだったので、この講座で、擬似的にHRBPを経験できると思いました。受講で得たものは 同期の仲間です。今でも定期的に飲み会を開いていますし、人事トピックで「これが知りたい」という時に、気軽にディスカッションし合える関係です。また、講座の中で、当時勤務していたGE以外、もしくは人事以外の経歴をお持ちの方と話ができたことも良かったですね。経営者の視点で人事をどう見ているかを教えていただいたことで、自分の世界が広がったと思っています。さらに、受講を経て、これまで自分なりに仮説を持って取り組んできたことが正しかったと自信を持つこともできました。HRBPとして転職する勇気になったと思います。
- 私は当時、HRBPになったばかりで、リーダーシップや、能力、スキルにまだまだ足りないところがあると感じていました。また、人事の仕事をもっと知りたい時、自社しか見えていないと世界が狭いなと思っていました。この講座を受けることで、自身のリーダーシップについて考えることができる、転職せずとも他の会社の皆さんの話を聞けて意見交換ができると思ったのが参加の動機です。講座冒頭の、八木洋介さんの「人事はサポーターじゃない」というお話が印象的で、肝に銘じないといけないなと思いました。自分が能力開発やトレーニングを専任でやっていたころは、事業部に対して外からアラートを鳴らしたり、現場につなぐまでしかできないもどかしさがあったので、実際に、自分が事業部内の人事に踏み込める立場になったあと「サポーターではなくビジネスにどうインパクトを与えてドライブしていくか」という言葉を聞いて、その通りだよねと、改めて感じました。自分の人事としての目指したい在り方・考え方に影響を与えたと思います。
- 私が、この講座に参加したのはちょうど当社の新しい制度を立案し、労使協議を始めようという時期でした。私は、どちらかというとオペレーション思考が強い人間だと思っていて、プロセスをきっちり回すことにフォーカスします。ただ、制度設計では、「どう在りたいか」というビジョンから考える要素を欠かすことができず、そこに課題を感じて講座を探していました。参加してみて、影響が大きかったものは、物事を考える視座や着眼点の部分です。例えば、講師の島田由香さんが、働き方改革の定義について「社員の生き方を変えていく」という言い方をされていて。普段、自分が生産性を考える時は、アウトプットとインプットのどちらを動かしたらどうなるか、というような、全く違う考え方をしているので、こんな風に社員のマインド面に働きかける論点もあるんだなと気づきを得ました。また、C&B(報酬・福利厚生)の設計についても、宇佐見英司さんが、単なる仕組み化の話ではなく、設計の思想とか理念から踏み込んでレクチャーしてくださったことも印象的でした。このように、講師陣のレクチャーやディスカッションの中で、様々な視座をいただいたと思っています。