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コラム

2021.08.26

会社に来なくても仕事はできるけど、上司ならメンバーとの接点と活躍の場を考えてあげたい ―リーダーが意図を持って設計したいチームのコミュニケーション(前編)

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山﨑 俊樹 Toshiki Yamazaki
山﨑 俊樹 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

部下がネットワークを広げるために、上司が意図をもって周囲に働きかけることができないか?

3つ目は、部下のネットワーキングを促進することです。同じチームの人たちとばかり話していても、新たな視点やアイデアを得るこができません。しかし、ただ単に「これからは他部門の人たちとコミュニケーションを取って今以上に創造的な仕事ができるようになりましょう」と話すだけでは上手くいきません。これを聞いたメンバーにその気持ちがあったとしても、行動には移しにくいものです。リーダーがすべきことは、そのネットワーキングに参加することでメンバーにはどのようなメリットが生まれるのかを整理した上で、それをメンバーに伝え、背中を押してあげることです。

社内のネットワーキングであれば、例えば、社内に新しいプロジェクトが生まれ、プロジェクトメンバーを公募しているならば、次の段階へと成長してほしいメンバーに対して、プロジェクトへの参加を推奨するといったことができるでしょう。リーダーは、自分がそのプロジェクトのリーダーに根回しできる関係性があることを示しつつ、「参加してみたら?君にとってこういうメリットがあるよ」と言って背中を押してあげる。こうした働きかけによって、メンバーは安心してチーム外での活動を通じて社内ネットワーキングを構築し、新たな経験と知見を得ていくことができるようになります。

次に、社外ネットワーキングの重要性についてもお伝えしたいと思います。私事ですが、教育の世界とは別の世界も持っています。それは音楽の世界です。若い頃にジャズ音楽に魅せられ、ジャズサキソフォンプレイヤーとして活動しています。いまはコロナ禍でなかなか難しいですが、自分のバンドを率いてお店で演奏したり、お店にフラッと顔を出して見ず知らずの音楽愛好家たちとセッション(合奏)をしたりすることもしばしばです。実はこのような機会から私は多くの学びを得ることができています。ずいぶん昔になりますが、あるミュージシャンからは、きみのソロは長すぎるからもっと短くすべきだと助言をもらいました。この言葉には、もっと凝縮したメッセージの発信を心がけなさいという意味合いを感じ取りました。あるお店のオーナーからは、お客様と必ず1回は会話をしなさいと言われました。休憩時間にお声をかけて、いらしたことへの感謝の言葉をかけることがいかに大切かということ、話をするのが嫌なお客様もいるので、一言お声をかける程度にする配慮も必要だということも感じ取りました。こうした経験の繰り返しを通じて、音楽の世界から離れた教育の世界における仕事の姿勢に対しても良い影響をもらっています。例えば、私の場合は研修講師として、講義やファシリテーション、インストラクショナルデザインなどに良い影響を受けていると感じることがあります。受講者へのメッセージの出し方では、「同じ言葉で何度も伝える」「あれこれ尾ひれをつけない」などが自然にできるようになりました。あるいは、昔ライブハウスで働いた経験があるという、仕事で知り合った知人を音楽の世界へと再び誘ったところ、「演奏家としてチャレンジしたことで非常に視野が広がった」と言います。私にとって、このことは「他者に良い影響を与えることができた」という経験にもなりました。こうした1つ1つの出来事は些細なことかもしれませんが、後になってとても役に立つことがあります。このような一見仕事と関係がない世界での経験が現在のビジネスに影響を与え、仕事に対する姿勢や取り組みを新たにすることのきっかけになるのです。

変化の激しいVUCAの時代とも言われますが、このような時代においてこそ、リーダー自ら様々な形で社内外のネットワーキングを広げるとともに、メンバーにとってのネットワーキングのメリットと重要性をメンバーに伝え、積極的に取り組み、経験を重ねることを支援することで、お互いに仕事に対する新たな視点を増やし、アイデアを享受し合えたら良いと思います。

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