コラム

2021.09.15

日本の文化が、私たちの自信の無さに影響を与えている? ~グローバル環境における自己肯定感の高め方(前編)

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加藤 円 Madoka Kato
加藤 円 サイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント

勤勉さと改善思考は強みにも弱みにもなり、時には自分を苦しめる

次に「動機づけのあり方」を示す女性的文化/男性的文化(MAS)を見てみたいと思います。MASは100に近い国では目的や目標が明確で、「業績、成功、秀でること」が動機づけとなり、成功者が賞賛される競争社会です。逆にゼロに近い国では「Care for others」が動機づけとなり、関係者のコンセンサスを優先し、他者への思いやりを追求します。

では、日本のMASスコアはいくつだと思いますか?

実は、日本のスコアは92で、世界トップクラスの高さです。「思いやりのある国」と評されることも多い日本ですから、意外に思う方も少なくないかもしれません。しかし、日本の「ものづくり」「武士道」といった精神、あるいは肩書・地位・年収のために働く、目標達成のために邁進する姿は、MASスコアが高い特徴を如実に表しています。

こうした完璧主義に近い価値観は、困難な状況にも屈しない大きな原動力になる一方で、実は自己肯定感を得られにくい文化であると言えます。理想や高い目標を掲げることは決してマイナスなことではありませんが、最終目標を達成するまでの過程では、ついつい「自分はまだまだだ」といったように、できていない自分にフォーカスしがちになります。当社の研修後に行う振り返りの場面をみても、受講者も企業の研修企画担当者も、上手くいかなかったこと、改善点に関するフィードバック、もっと良くするためのアドバイスが欲しい、といった要望を非常に多くいただきます。より良いパフォーマンスをあげるために、できなかった原因やさらに改善できることを追求するのは重要で、有効なことなのですが、実際には、できたこと、上手くいったことの原因を追究することも同じくらい重要で有効です。「今日はUS本社との会議で時間内に結論に達することができたが、その成功要因は何だったのだろうか?」それは「いつもより事前準備を入念にして本社の指摘に十分返答できるだけの情報を持ち合わせていたからなのか。会議前にシャドーイングをしたら参加者の話す英語がいつもより理解できたからなのか。」といったように、原因が分かれば、良いパフォーマンスの再現性が高まるのです。

いつもいつも、できなかったこと、ダメな自分ばかりに目を向けていると、自分自身を信じられなくなる、まさに自信を持てなくなっていくのではないでしょうか。自信がなければ新しいことに挑戦することがより難しくなります。グローバルな環境では、初めて外国人部下を持つ、グローバルカンファレンスでプレゼンする、など、新しいこと、今までやったことがないことにチャレンジしなくてはならない場面が多いものです。また、過去に日本語で、日本人相手に経験があることでも、相手が外国人になることで今まで通りにいかない場合が多いですから、よりできないこと、上手くいかないことに囚われやすくなります。

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