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座談会

2021.10.22

2年分の試行錯誤を経て分かった、リモートと仕事のリアリティのつなぎ方 ―2022年の新入社員研修への展望(前編)

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

新入社員の感覚や率直な声を拾うためには?オンラインか会場に集めるかの議論を超えて、意図をもって選択したい

  • 小西 功二
    21年度の新入社員研修では、コロナがどう推移するかの見通しが全く立たない中、各社、安全面や効果性といった様々な観点から実施時期や方法などを試行錯誤してきました。皆さんのお客様においては、研修のオンラインオフラインといった手法の選択や、運営の方針についてどのような判断を行ってきたのでしょうか。
  • 齊藤 彩
    少し意外に思われるかもしれませんが、実は、私の担当しているお客様の7~8割がオフラインでの集合研修をおこなっています。
  • 小西 功二
    そんなにオフラインが多いのですか?私が関わった研修ですと、9割はオンラインでしたね。
  • 齊藤 彩
    お客様の業種によるところも大きいです。例えば、製造や設計といった、普段の業務からリモートワークそのものを実施していない、工場や現場に毎日出勤しているような企業では研修もオフラインです。業務で使わないため、PC、タブレットといったオンライン研修の受講に必要な端末を社員に貸与していないということもあります。
  • 中澤 悠希也
    私が担当しているお客様の場合、オンライン、オフラインだいたい半々くらいで、どちらかというと、オンライン研修をメインでおこなうお客様の方が体感的には多い気がしますね。ある電力会社様は、発電所などの現場に迎え入れる新入社員のトレーニングですので、9割以上が現場での実施です。逆に、あるITサービス会社様では、コロナ感染対策の観点から、研修・業務あわせても1ヶ月で1回しか出社しません。出社時も何時から何時の間にこのグループは出社して、これが終わったら退社してください、というようなリモートワーク体制を徹底しているので、研修はほぼ全てオンラインです。業種や勤務体制などの理由で実施方法を決める企業が多い印象です。
  • 齊藤 彩
    リモートワーク移行の年であった20年度に、オンラインとオフラインの両方で研修を実施してみて、この年把握したメリットや効果の違いをふまえて翌21年度の研修方法を選択した、という企業もあると思います。これは、あるメーカー様の研修をオフラインで実施した時の話なのですが、研修中、先輩社員との報連相に関するケーススタディをやりました。「先輩がざっくりした指示を投げてきました。それに対して、あなたから先輩にどのようなアプローチをとると、仕事をきちんとこなせるでしょうか」という問題に対し、会場にいる新入社員の中から「そんな指示を出した先輩が悪い」という声が出てきたんですね。このような受講者の本音は、ZoomやTeamsではどうしても拾い上げにくいものです。この時は会場に集めて実施したからこそ、新入社員たちがガヤガヤと話している声が我々運営サイドにも聞こえてきて、「ああそうか、今年の新入社員はこういう感覚を持っているのか」と気づくことができ、その後のプログラムの判断材料にすることができました。

    こういったオフラインの集合研修にある「場の空気や声、温度感などが伝わりやすい」という特徴を意識すると、逆に、ネガティブな空気が醸成されることも多いOJT研修などはあえてオンラインで実施する方が良いと言えます。研修を受ける新入社員の上司やトレーナーの一部が、「育成を請け負うことになって大変なのに、研修にまで参加させられている」といったネガティブな気持ちで参加していると、その感情や態度が会場で他の参加者に伝搬し、研修全体の空気を悪くしてしまう恐れもあります。一方、オンラインで研修をすれば、受講者は一人ひとり別々の場所から参加しますから、そのような心配はありません。意外と素直に自分の課題を講師や他の受講者に吐き出すことができたりします。

    このように、研修の手法を選択する際には、新入社員の声や課題を拾い上げたい、場の空気をこうしたい、といった狙いを持つことが大切で、もしそれに最も適した方法が会場に集めての集合研修なのであれば、意図をもって選択すると良いのかなと思います。
  • 小西 功二
    そうですね。「工場勤務だから工場でやる」「端末やインフラがあるからオンラインでやる」というようなロジックで研修が決まるのは違うと思っています。21年度は、コロナが感染拡大する中、リスクを背負っても、大人数を集めて研修を行う企業もありました。そういう企業では、他社と一括りにはできない、会社独自の目的があって意思決定をしたと思うんですよね。今後も、世の中のウィズコロナの状態は続くかもしれませんが、企業は、周囲の状況や会社都合で研修を一律に決めるのではなく、「ここでは一体感の醸成が必要だから」「ここでは新入社員の声を拾いたいから」という狙いをもって、オンラインやオフラインなどの方法を使い分けたり、使用するツールなどを選択していくべきです。そして、その狙い、意図というのが、新入社員本人にとっての課題を解決する合理的なものであり、「良い会社に入れた」と思えるようなものであると良いですよね。コロナ禍が始まってからのこの1年半は、企業が効果的な研修方法を探求する学びの期間だったとも言えます。

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