- 小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

ここ数年、ビジネスの世界で『顧客体験』というキーワードが注目されています。背景には、消費者ニーズの多様化、プロダクトライフサイクルの短命化、インターネットの普及に伴う提供者・消費者間の情報格差の消滅などがあります。
こうした背景を受け、「モノからコトへのシフト」を合言葉に、各社とも“製品サービスそのものの価値”ではなく、その“利用”を通じて顧客が得られる“体験やストーリー”、さらに言えば、一連の顧客体験を旅路に見立てた『カスタマージャーニー』に積極的に意味付けし、『体験価値』として訴求する傾向が強まっています。
そしてこの流れは、エドテック(EdTech:教育とテクノロジーを組み合わせた造語)の進展、デジタルトランスフォーメーション(DX)の広がり、そしてコロナ禍によるリモートシフトとも相まって、人材育成の領域にも押し寄せています。つまり、トレーニングの在り方は、「いかにして効果的・効率的に受講者に知識やスキルを身に付けさせるか」という提供者主体の『インストラクショナルデザイン』から、「いかにして学習者に意味のある学習体験を積ませるか」という『ラーニングエクスペリエンスデザイン(Learning eXperience Design:LXD)』へと進化と深化が求められているのです。
本稿では、クリスタル・カダキア&リサ・M・D・オウエンス著、中原孝子訳『ラーニングデザイン・ハンドブック 仕事の流れの中で学びを設計する』(日本能率協会マネジメントセンター、2022年9月)をベースに、人材育成ビジネスに実務家として携わる筆者の見解を加えながら、LXDについて解説していきます。