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コラム

2023.02.02

学習者の“学習体験”を重視するラーニングエクスペリエンスデザイン【LXD概論】

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

LXDをどのようにデザインするか

ところが、学習者主体の“学習体験”にフォーカスを当てた途端に、早速壁にぶち当たります。すなわち、「人の好みや価値観は千差万別である」という壁です。どうやってその壁を乗り越えていくか、考え方をSTEP1~5の順に整理してみました。なお、LXDの具体的な設計方法に興味がある方は、学習者の“学習体験”を重視するラーニングエクスペリエンスデザイン【LXD設計のポイント】も併せてご覧ください。

●STEP1:学習目標・ゴールの設定

業務上のパフォーマンス向上にフォーカスした学習目標・ゴールを設定することが大事です。学習前後の「観察可能な行動変容」を具体的にイメージし、その行動変容が「どのような数値になって現れるか」を突き詰めれば、いずれの職種であっても定量的な目標・ゴール設定は可能と考えます。

●STEP2:学習者のペルソナ設定

学習者の“課題の認識度合いの違い”や“学習スタイルに対する選好の違い”を意識しながら、ペルソナを複数設定することが大事です。パレートの法則に従えば、最低3種類程度のペルソナを設定すれば十分でしょう。STEP1で設定した学習目標・ゴールの達成に対して最もインパクトの大きい学習者をペルソナに盛り込んでおく、つまり、どのペルソナが行動変容すれば全体的な学習目標・ゴール達成に最も近づくのか、を想定しておくことが肝です。また、各ペルソナ作成においては、この後のSTEP4「ラーニングジャーニーの設計」のベースとなる“ストーリー”を練り込んでおくことも重要です。

●STEP3:ラーニング・タッチポイントの考慮

各ペルソナの学習選好を加味してラーニング・タッチポイントを準備しましょう。ラーニング・タッチポイントは次の3種類に大別できます。

  • フォーマルラーニング:
    学習提供者が設計する集合研修、e-ラーニングなど
  • ソーシャルラーニング:
    学習者同士の自発的な学び合いであるチャットルームでのオンラインディスカッションや、メンターへの相談、1on1コーチングなど
  • 即時的学習:
    学習者自身が好きな時にいつでもアクセス可能な、映像コンテンツ、インターネット検索、書籍など

●STEP4:ラーニングジャーニーの設計

準備したラーニング・タッチポイントを組み合わせてラーニングジャーニーを設計することが大事です。その際、各ペルソナが全てのタッチポイントを体験でき、かつ自らの学習選好に応じてタッチポイント体験に濃淡をつけられるよう、各『学習資産』を配置することが重要です。『学習資産』とは社内外問わず、企業がアクセスできるあらゆる学習コンテンツのことで、研修、e-ラーニング、チャットでのディスカッション、映像コンテンツ、インターネット検索、ブログ、書籍などです。STEP3で記載した「ソーシャルラーニング」と「即時的学習」はインフォーマルな学習であり、これらをどのように促すかについては設計の妙が求められますが、フォーマルラーニングとインフォーマルラーニングを織り交ぜた「複線型のラーニングジャーニーの設計」は、LXDの真骨頂と考えます。

●STEP5:KPIの設定とモニタリング

学習者の段階的な行動変容をモニタリングするためのKPI設定が大事です。その際、個々の学習資産単位でKPIを設定するのではなく、ラーニングジャーニー全体の効果測定としてKPIを設定していくことが重要です。ラーニング・タッチポイントの違いを考慮しながら、複数のKPIを設定できれば理想的でしょう。

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