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コラム

2023.02.02

学習者の“学習体験”を重視するラーニングエクスペリエンスデザイン【LXD概論】

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

“有意義な学習体験”の正体とは?

最後に、本稿の最重要テーマである「“有意義な学習体験”とは一体何なのか」について、主観を述べたいと思います。

皆様はこれまでの社会人経験の中で、有意義な学習体験を感じた瞬間はありますか?分からないことが分かった瞬間、コーチングを受けて思考の枠組みが外された瞬間、既存の知識と新規の知識がつながって、知識が構造化された瞬間、あるいは、学んだはずのスキルをうまく実践できなかったこと、プレゼンテーションで冷や汗をかいたこと、他者とのディスカッションで論破されたことなどは、悔しさと共に「しかし、良い経験になった」と思い出されるかもしれません。

私自身の30年弱の社会人経験を振り返ってみても、今なお思い出される有意義な学習体験は確かにいくつかありますが、さほど多いわけではありません。他者との相互作用の産物、偶然の産物であることも多く、あらかじめ狙って体験できたことは、ほぼ無いかもしれません。トレーニングベンダーに籍を置き、学習提供者側に回ったこの10年を振り返ってみても、受講者の皆様にどれほど有意義な学習体験を提供できているか、正直に告白すると心もとないです(もちろん、常にそれを企み、品質向上に努力しているつもりですが)。

しかしながら、それら稀有な瞬間の共通点を探ると、何かしらの高揚や熱狂、独学ならば没中状態、「場」から生まれる特別なパワーに時に巻き込まれ、時に自ら加わり、「場」への貢献を模索しながら、自分らしさを発露し、または承認され、志を共にする仲間と分かり合えた瞬間があったように思います。有意義な学習体験、意味がある学習体験とは、そういうことを指すのだと思います。

LXDにおいては、このような有意義な学習体験を提供者側が作り込んで提供するというよりも、その体験に必要となる前提条件や要素をラーニングジャーニーとして盛り込んでいくことではないかと、私は理解しています。前提条件・要素とは、上述したような、自主と自律の精神、「場」への貢献意欲、自分らしさの発露と周りからの承認、「場」への一体感、結果としての熱狂や没入などです。

意味や意義は短期的に与えられるものではなく、時間をかけてじわじわと感じること。そのように考えると、LXDの設計思想、長期の学習ビジョンやコンセプトづくりが大切になってきます。ビジョンやコンセプトに共鳴し、体験を作り込むのが学習者、その環境を整えるのが学習提供者であり、その手段がLXDなのではないでしょうか。

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