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山﨑 俊樹
サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
ASTD ICEに初参加
5月5日早朝から行われた基調講演。
今年の5月4日から7日まで、ワシントンD.C.でASTD(American Society for Training & Development)の国際会議が開催されました。私はこの会議に初めて参加しました。ASTDは大学や政府機関、企業の教育関係者、そして教育トレーニングを専門に行うベンダーなどが参加するグローバル規模の会議です。開催都市は毎年変わり、80ヵ国以上から1万人が参加するビッグな式典です。
ASTDから「ATD」へ
会期最終日にATDに表示が変わったエントランス。記念撮影をしているのは、お世話になった株式会社IPイノベーションズの方々。
最終日にはちょっとしたサプライズがありました。それは69年目を迎えたASTDという名称を、「ATD」(Association for Talent Development)という名称に変えると発表したことです。変える理由、それは、「社会環境や企業のあり方が激変している時代に、知的ネットワークを支援する当団体は果たして変化しなくて良いのか」という背景があったようです。この声明に運良く立ち会うことができたことも、会議参加の喜びの一つになっています。
顧客を軸に組織を回す
さて、会議に参加する人たちの目的は様々ですが、私としては、世界中の教育専門家や先進企業が考え実行しているトレンドを吸収すること、新しい教育方法を自分なりに発見することを期待して参加しました。私が注力しているテーマは営業強化です。会期中いくつかの営業強化セッションに参加しましたが、印象深い内容を少しだけ紹介したいと思います。
初日、私たちと同じくグローバル規模で活躍している営業トレーニング専門会社のプレゼンテーションに参加しました。彼らは営業リーダーが行うことの中で最も重要なのは“顧客マネジメント”であると言っています。顧客をしっかりと直視して、どのように顧客の価値を創造すれば良いのかを第一義に考えられる組織が重要であり、簡単に言えば「顧客を軸に組織を回す」ことです。
営業リーダーは多忙です。自部門の戦略立案、人材の採用、育成のための教育、メンバーの評価、通信やFace to Faceのコミュニケーションの仕組みづくりなど、営業リーダーが行うことは山ほどあります。それらを上手に検討しなければなりませんが、検討する順番を間違うと顧客の価値を創造することはできません。営業活動で重要なのは、まず顧客との機会をいかに作るか、その機会をどう上手く活かすか、そして顧客とどう関係を深め協力し合うか、この考えを軸に組織を動かさなければなりません。
目的は顧客の価値を最大にすることです。手段を先に検討しては間違った方向に行きがちです。プレゼンテーションを行った同社では、これをシンボリックなフレームで紹介していました。私たちサイコム・ブレインズは「HPC®」や「IDEA」といった、顧客に深くそして長期的に関わる営業のためのフレームを持っていますが、この考え方と同じ世界観を感じました。共感を覚えたシーンとして印象に残っています。
営業組織への“4つの問い”
同社では優秀な営業組織の取り組みについて実態調査を行っています。当セッションではその取り組みの傾向をいくつか紹介してくれましたが、特に印象に残ったことがあります。それは、営業組織に関する次の4つの質問に対する回答です。
- あなたの営業組織は、重要な顧客をマネジメントするために、組織を越えて協力し合っていますか。
- あなたの営業組織は、トップセールスがなぜ成功するのかの要因を知っていますか。
- あなたの営業組織は、トップセールスのベストパフォーマンスを分析し、その営業戦術を組織的に取り入れていますか。
- あなたの営業組織は、ナレッジマネジメントシステムを当てにしていますか。(システムに頼っていますか。)
日本から参加された方々との情報交換会。各々が見聞きしたセッション内容を互いに共有しました。
さて、皆さんの会社の営業組織ではどうでしょうか。Yesと答えられる質問はいくつありましたか。これらの4つの質問に対する優秀な営業組織のYesの回答率は平均して9割弱でした。全体のYesの回答率は4割にも満たないそうですから、この質問は営業組織の課題として見過ごすことはできません。
組織を横断して顧客を支援する、成功事例の要因を見極めて速く展開する、そして最新のシステムを大いに活用する。これらは環境が複雑な今の時代において、企業が成長するための秘訣と確信しました。私は日頃から営業強化の支援を専門にしていますが、お客様との接点の中で、私なりの言葉で、これらの重要なことをお伝えできたら良いと感じています。