対談

2018.03.02

人事部の変革、人事担当者の自己改革 ― 八木洋介氏に聞く、会社を変えたい人事パーソンへの処方箋(後編)

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江島 信之 Nobuyuki Ejima
江島 信之 サイコム・ブレインズ株式会社
執行役員

「今の自分が正しいと思うこと」をする…総論賛成/各論反対のジレンマを乗り越える

江島 信之 氏
  • 江島 信之
    人間としての「軸」から発展して考えると、戦略人事を推進する人事パーソンとしての「軸」あるいは「設計図」というものも、やはり必要なのではないでしょうか?
  • 八木 洋介
    「自分が正しいと思うことをやりなさい」といったときに、真面目な日本人は「何が正しいことなんだろう?」と考えて、「分からない」という結論に至って、「分からないから何もしない」となってしまうんです。

    だから、僕は「今」という言葉を付け加えます。「今の自分が一番正しいと思ったことをやりなさい」と。今を肯定して、今の自分だからこそ思える何かがある。間違っていてもいいんです。自分で立って、自ら行動を起こす。そうすることで、必ずなにがしかの変化が起こるはずです。
  • 江島 信之
    そうすることで周囲から抵抗されたり、上の立場の人から疎まれたりすることもあります。それにはどう対処したらよいのでしょうか?
  • 八木 洋介
    それが怖い人は何もしなければいい。軋轢を生むことが嫌で、それを避けて生きたければ、そうしなさい。でも後になって「何だったんだ? 俺の人生は」と思うかもしれませんよ。だから、「あなたはどんな人生を生きるんですか?」と自分に問いかけて欲しい。たいていの人は「自分の生き方をしたい」と思うはずです。意見が違う相手と喧嘩をしろというわけではなく、できるだけ軋轢を生まないようにコミュニケーションをしたり、小さくても結果を出せば、周りも「なるほどね」と思ってくれる。
  • 江島 信之
    結果が出なかったらどうしよう?という恐怖心もあるのでしょうね。
  • 八木 洋介
    結果が出るか出ないかで悩むのはやめましょうよ。なぜなら、社員というのは普通の人なんだから。普通の人は正しいことは好きだけど、同時に既得権を失うのは嫌なんです。変革は起こそうとすると必ず何かを失うんです。変化に対して抵抗しようという意識が働くんです。まさに「総論賛成・各論反対」です。行動経済学でいえば、人間は「損失回避性」というのをみんな持っている。だから、各論なんて聞いちゃだめなんです。多数決で決めていたら、変化なんて絶対起こらない。

    でも、リーダーというものは、「失うかもしれないけれど、今よりもっと良い未来があるはずだ」と思える人間なんです。そういう人間がどの会社にも10%ぐらいはいる。そういうリーダーを発掘して育てるのも、戦略人事の仕事ですよ。
  • 江島 信之
    八木さんご自身が強くてぶれない軸を持つに至ったきっかけは何だったのか、非常に興味があります。
  • 八木 洋介
    日本鋼管のときに社長批判をして、その後で「こんなことをしたって、何も変えられないじゃないか」と気づいたんです。そこからは社長がどうこうではなくて、すべてにおいて「自分がどうあるべきか? 自分が何をすべきか?」に変わった。それが40歳くらいの頃。

    GEはストレッチカルチャーだから、「お前これやってくれよ」って、やればやるほど仕事が来るんです。会社に自分の人生をコントロールされると思った。でも俺の人生はGEのものじゃない。だから会社にはウイークデーの12時間だけ。それ以上はあげない。それ以外の時間は自分のために使う。
  • 江島 信之
    そういう意味では、ストレッチ・アサインメントは何かを変える一つのきっかけにはなるかもしれませんね。でも、八木さんのように思い切れる人って、なかなかいないですよね。
  • 八木 洋介
    江島さん、私がここまで来るのに何年かかったと思ってるんですか? 40歳を過ぎてやっと自分が馬鹿だったと気づいたんだから。

    だから、若い人たちには言いたい。今からでも始めなさい。絶対、八木よりも素晴らしい人生になるよ。八木みたいな普通のおっさんでもこれぐらいにはなるんだから。だから考えなさい。考えて「これだ」と思ったことを実践しなさい。それだけです。
江島 信之 氏,八木 洋介 氏

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