対談

2018.02.27

個と組織の両面から考える、ミドル世代のキャリアと学び ― 電通 酒井章氏

  • b! はてぶ
勝 幹子 Mikiko Katsu
勝 幹子 サイコム・ブレインズ株式会社
執行役員

「孤独」と「心理的安全」――縦・横・斜めのコミュ二ケーションを設計する

酒井 章 氏
  • 勝 幹子
    「キャリア開発」といったときに、一般的には研修やカウンセリングといった、割と個人にフォーカスした施策をイメージします。一方で酒井さんのお話をお聞きしていると、全社員の意識改革の仕組み、あるいは経営層のコミットメントなど、組織への働きかけの視点も必要なんですね。
  • 酒井 章
    そうですね。電通としても、2016年頃からは個々の社員だけではなく、それを組織とどのようにマッチングしていくか、いわゆる組織開発と融合させることがテーマになっています。

    現在は実験的な取り組みとして、ある部門で「やりがいプロジェクト」というものを行っています。このプロジェクトのメインは個人面談です。部門の社員と幹部、そして私の三者で面談をして、個人の課題、部門の課題、会社の課題を洗い出します。そのうえで、「三位一体モデル」と呼んでいますが、キャリアコンサルタント、人事、ラインマネージャーが経営層に提言する。あるいは現場で解決すべきことはすぐアクションに移す、といったことをしています。
  • 勝 幹子
    なるほど。人事がキャリアコンサルタントを兼ねるケース方が多い中で、このモデルは課題の解決において人事とキャリアコンサルタントが独立している、というのがポイントだと思います。
  • 酒井 章
    一応は独立していますが、キャリアコンサルタントも社内の人間なので、相談しにくいこともあるでしょう。ただ、このモデルによって「縦・横・斜め」のコミュニケーションが生まれます。「縦」はラインマネジメントと部下、「横」はラインマネジメントどうし、そして「斜め」はキャリアコンサルタントとのコミュニケーションです。サントリーさんでは「TOO=隣のおせっかいおじさん」と呼ばれるシニア社員が、斜めのコミュニケーションを担っていますね。

    「生産性や効率も大事だけど、やっぱり一人ひとりのやりがい、心理的安全も必要だよね」という課題認識が、このプロジェクトのベースにあります。今の時代、ラインマネジメントは忙し過ぎて、部下をきちんと見ることができなくなっています。だからこそ、斜めから職場全体を見て対応する機能は必要だと思います。
  • 勝 幹子
    その部門では、やりがいや心理的安全というものがあまりない状態だったのでしょか?
  • 酒井 章
    実は各階層の研修で出てくる共通のキーワードがあって。それは「孤独」なんです。「自分たちだけが頑張らされている」「なんで自分たちだけがこんな目に…」といった感じで。要は、他のレイヤーとのコミュニケーションが断絶しているんですね。
  • 勝 幹子
    酒井さんがそうであったように、忙しいながらも社会的にインパクトのあるお仕事、ワクワクするような様々な経験ができる職場…というイメージがある中で、孤独という言葉が出てくるのは意外です。
  • 酒井 章
    先ほど「デジタル化」と言いましたが、たとえば新聞やテレビといったマスメディアの広告は、新聞社・テレビ局に素材を納品して終わりです。一方デジタルメディアは、世の中に出してからトラッキング、つまり効果を検証して調整する仕事が始まります。それぐらい、目の前の仕事に追われていることが孤独感を増長させている。だからこそ、「心理的安全」というのはすごく重要な課題だと思います。

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