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蒋 小敏
サイコム・ブレインズ株式会社
コンサルタント
母国語と日本語、あるいは英語を流暢に話し、成長意欲も高く、誰よりも日本企業で活躍したいと思う外国人は、まさに日本企業が求めている「グローバル人材」です。一方で日本人と同様に厳しい就職活動を乗り越えて自分の強みを活かせるはずの会社に就職できた彼らは、なぜ半年や1年という短い期間で離職という道を選んでしまうケースが多いのか。その根本的な理由は何でしょうか?
もちろん離職の理由はさまざまですが、よく聞こえてくるのは「日本の企業文化や働き方に納得がいかない」という声です。外国人社員が受け入れ、納得することができない「日本の企業文化や働き方」とは、具体的にどういったことなのか。ここを掘り下げて理解すれば、貴社においても適切に離職防止策を取ることができるのではないでしょうか。
私は中国出身の中国人で、中国の大学を卒業後、日本の大学院に入学しました。卒業後はグローバルな環境で自分の価値を高めたいと考えて、新卒採用枠で日本の大手小売企業に就職しましたが、半年で離職しました。本コラムでは、その経験を活かして外国人社員の離職理由と日本企業への期待についてお伝えしたいと思います。
あなたの会社は外国人社員を本当に理解していますか?
独立行政法人 経済産業研究所と一般社団法人 日本国際化推進協会が2018年に行った「外国人材の日本での就業意識に関する調査」によると、過去日本で働いていた方で、現在帰国または第3国で働いている方の、日本を離れるまでに日本企業で働いていた期間(平均勤続年数)は約2年でした。彼らはどのような理由で辞めていくのでしょうか。
そこで、私の周りにいる日本で働く外国人社員にヒアリングし、その結果を日本のビジネス環境における外国人社員の離職の理由として以下の3つにまとめてみました。
- 1)キャリアプランとしてそもそも1つの会社で長く働くことを想定していないし、会社とWin-Winの関係や自分へのメリットを感じられなくなれば離職する。会社から言われるような「長期的な視点で成長を見ていく」ということには共感できない。
- 2)将来のキャリアを明確に示してほしい。例えば、将来的には自分の母国で重要なポジションを貰える、もしくは〇年後にはどのような仕事でどのぐらいの給料もらえる、というように、目に見えるプランをはっきりと示してほしい。
- 3)会社から指定した資格を勉強しなさいと言われる。資格取得への意識は高いが、なぜその資格の取得が必要なのか、いつ、どこで使うのかという説明がないし、この会社の現場でしか使えないような内容の研修ばかり受けさせられている。
こうした不満を持つ背景として、外国人社員は「自身が描くキャリアパスと実際の業務の間にギャップを感じている」、採用された時から「自分は会社から日本人と違うことができることを期待されているという認識を強く持って就職している」、入社後に受ける「OJT制度に対して違和感を持っている」という点にお気づきでしょうか。日本の企業文化と働き方に起因するこれら3つの点について、私の経験を交えながらテーマとして取り上げて、お伝えしてゆきます。