コラム

2019.12.06

ブームなのに他人ごと?「自分ごとSDGs研修」のススメ

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田村 拓
田村 拓 青山学院大学 社会情報学部 プロジェクト教授 / 一般社団法人 EDAS(イーダス)理事長 / ニホンゴカンパニー株式会社 代表取締役 CEO

変わる教育現場と子ども・若者たちの意識

SDGsは、人類共通のテーマ。この秋に、日本各地に大きな被害を与えた巨大台風発生の原因は気候変動にある可能性が高く、日本だけでは解決できないように、世界的な問題であっても、結局それを解決できる唯一の主体は個人です。実は、日本でこれに一番近い考えを持っているのは、小学生から大学生くらい、すなわち子どもと若者かもしれません。教育の現場ではSDGsを学ぶ取組みが多数行われていることをご存知でしょうか。そこではSDGsは身近なテーマです。フードロスを減らすため、海洋資源を維持するために日常生活で何をすればよいかを皆で考える。授業ではそんな話し合いをします。校内に貼られたポスターがSDGsの研究成果の発表だったりする学校をよく見かけます。一方、大人はどうでしょう。企業の人材を構成する世代的にみると、一般論として、実は年齢が上にいくほど意識が低い気がします。その理由は、SDGsを企業が行うものであって、自分自身のテーマと認識していないからではないでしょうか。

昨年から今年にかけて、SDGsを取り上げた雑誌や書籍が多数出版されています。ここでも関心の高まりを感じます。しかしそれ以前は、なかなか適切なものが見当たらず、「SDGsについて学びたい」という声に、よいアドバイスができませんでした。そんな中見つけたのが、『SDGs 国連世界の未来を変えるための17の目標 2030年までのゴール』(日能研教育部 編/みくに出版/2017)でした。学習塾を運営する企業による編集であることからもお分かりの通り、この冊子の対象は子どもたち。実は今、中学や高校の入試にSDGsのテーマが取り上げられているのです。子ども向けの冊子と侮るなかれ。基本的な考え方はきちんと網羅されていて、しかも分かりやすいのです。というわけで、つい最近まで、SDGsの入門書が欲しいという方には、本書を紹介していました。

SDGsのテーマは、気候変動以外にも、貧困、飢餓、健康と福祉、教育、ジェンダー平等、安全な水、クリーンエネルギー、経済成長、イノベーション、平等、まちづくり、生産と消費、海洋資源、陸上資源、平和と多岐にわたります。そしてその理念は、「誰一人取り残さない~No one will be left behind」です。誰一人取り残さないとうことは、全ての人間にとってのテーマに他ならないということです。