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内藤 高史
サイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント
皆さまこんにちは。前回のコラムでは、2年前からお世話になっている金融業、B社の研修支援事例についてお伝えいたしました。そして第3回目の今回は、昨年支援の機会を頂いた銀行C社における営業力強化研修事例をご紹介したいと思います。
研修支援の概要
受講者は、入行2年目の窓口営業社員約200名でした。受講者の日々の業務は、大きく分けて2つあり、1つはお客様の預金の入出金、税金等の振込、住所変更といった窓口対応サービスを提供することです。そしてもう1つは、ご来店いただいたお客様に対して資産運用に関するコンサルティングを行うことです。
前者については、できるだけスピーディーにお客様のご要望にお応えすることが要求されますが、後者については、お客様とじっくりと向き合い、今後のライフイベントや資金計画を把握し、それに見合う投資信託などの金融サービスを提案するスキルが必要になります。
入行1年目の社員は、窓口対応サービスの提供業務に就き、日々先輩社員のOJTのもと、1年間その業務にあたります。そして2年目からは資産運用コンサルティングがメインの業務となります。
入行2年目の中盤となると、窓口対応サービスの提供業務については、ほとんどの方がミスなくスピーディーに行えていますが、資産運用コンサルティングの方は、思うような成果に繋がらず、難しく感じている方が多くいらっしゃるとのことでした。
受講者の課題と研修実施
研修ご担当者様のお話では、受講者の課題は資産運用コンサルティングがうまくいかないことであり、少しでも業務に慣れて欲しい、スキルアップして欲しいとのことでした。そして、そのうまくいかない要因としては、行員が年齢の離れたお客様との会話に難しさを感じており、お客様のお話を十分に聞けていないというものでした。
ご担当者様との数回にわたるディスカッションの結果、
- なぜヒアリングが大切なのか、ヒアリングの目的は何かといった「営業のあり方」を考えること
- 普段の自己の営業スタイルを振り返り、「お客様と対峙した際のコミュニケーションスキル」について考え、気づきを導きだし、行動変容につなげること
この2点をねらいとした研修を実施することに決まりました。
研修実施後
研修実施後に行ったアンケートには、「高齢者のお客様にはいろいろな価値観があるものだと感じた」、『先輩が「お客様の立場に立ちなさい」という意味がようやく分かった』、「今まではお客様の話を十分に聞けていると思っていたが、研修でのロールプレイで、自分がお客様の話をあまり聞いていないことに気付かされた」といった意見があり、研修は概ねプログラムの狙い通りの進行ができたと思われます。
今回、研修実施前に研修ご担当者様から、業績の高い受講者の情報を頂いておりました。私は、研修中にその方々のロールプレイやグループ討議に取組む姿勢を観察し「業績の高い受講者に見られる共通点」を探索しました。その結果、以下のような共通点を発見しました。
①素直である
講師やグループメンバーとの会話で、業績の高い方々は頻繁に頷きながら「なるほど!」などと相槌を打ち“吸収しよう、新しい考えや手法を受け入れよう”という意欲が他の受講者より高いように感じました。素直さが気づきを生み、思考の変化を起こし、現場での行動変革、そして業績向上への高サイクルに繋がるのだと思います。
②お客様に関心がある
受講者がお客様役と営業役に分かれて行うロールプレイでは、ほとんどの受講者はお客様役に対して、資産や商品に関する質問が中心になりがちですが、業績の高い方々の質問は、お客様役本人に関する質問が中心でした。結果的に会話が盛り上がり、自然と良い関係が構築されていました。
③傾聴力がある、共感力がある
業績の高い方々は、質問の内容とその内容を聴く姿勢が他受講者とは違いました。傾聴力の中でも特に、共感力が高い傾向がありました。具体的には、ロールプレイの場で、お客様役の将来やりたいことや、今困っていることに関してヒアリングをし、その考えや価値観に寄り添って共感し、お客様役の方から自然と話したくなるように導くことができていました。
業績の高い受講者に見られる共通点は、C社の研修の場だけではなく、ディーラー、住宅営業、PC周辺機器などの営業パーソンの営業スタイルにも共通していると感じます。たとえ扱う商品・サービスに違いがあり、それが特殊なものであったとしても、お客様とのコミュニケーションにおいて、重要となるものに大差はないのだと思います。
今後も受講者の行動変化・業績向上に貢献し続けるコンサルタントでありたいと思います。
次回は建設設備における営業研修事例をご紹介します。