コラム

2015.04.16

管理職の成長と経験学習

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太田 由紀 Yuki Ota
太田 由紀 サイコム・ブレインズ株式会社
ファウンダー / プログラムディレクター 専任講師

「経験から学ぶこと」の大切さ

私たちは、しばしば「経験って、大事だよね」と言います。またつらい目に遭ったり失敗したときに、自分や相手を慰める意味で「良い経験になったよね」などとも言います。これは、私たちが無意識に“人は経験をすることで何らかの学びを得る”ということを前提としているからです。

因みに北海道大学大学院経済学研究科教授/松尾睦氏は、著書『経験学習入門』の中で「優れたマネジャーの経験を長年調査してきた米国の研究所によれば、成人における学びの70%は自分の仕事経験から、20%は他者の観察やアドバイスから、10%は本を読んだり研修を受けたりすることから得ていることがわかりました」と述べています。

しかし一方で「あの人は経験から学ばない人だよね」「新入社員は皆似たような経験をしているのに、なぜこうも成長速度が違うのだろう」等とも言われます。つまり、同じ経験をしても、そこから何かを学び成長する人と、経験しただけで終わってしまい何も学ばない人がいる、ということです。

経験から学ぶ人は、「経験学習モデル」を回している

では「経験から学ぶ人」はどのように学んでいるのか、というステップをモデル化したのが、デービッド・コルブが提唱する「経験学習モデル」です。

「経験学習モデル」は、「経験→省察(内省する)→概念化(教訓を引き出す)→実践(新しい状況に適用してみる)」のサイクルを繰り返しながら、実際の経験を通してそれを省察することで、より深く学べるという考え方です。つまり「経験から学ぶ人」は、このサイクルを常に回すことでスパイラル状に成長していくのです。確かに周囲を見渡すと、成長の速い人は、必ずと言ってよいほどこのサイクルを習慣化しています。

管理職が成長するために必要な「経験」とは

ところで、人が成長するためには「経験学習モデル」を身につけ習慣化することが必要であると同時に、なるべく多くの「経験」をする必要があります。しかもその経験が、これもまた多くの学びを内包した「良質なもの」であるに越したことはありません。

管理職が成長するために必要な「良質の経験」とは、どのようなものでしょうか?これについても前出の松尾睦氏が研究しています。

松尾氏が、中堅・大企業13社の課長・部長524名に対し実施した調査の結果、日本のマネジャーは、「部門を超えた『連携』の経験」「『変革』に参加した経験」「部下を『育成』した経験」の3種の経験により成長を重ねてきたことが判明しました(『成長する管理職』より)。

松尾氏には、昨年秋に弊社主催のプログラム発表会(※)で講演をお願いした関係で、これらの「経験」について直接お話を伺うことが出来ました。松尾氏によると、これら『連携』『変革』『育成』の経験は、担当者(若手)時代から経験を重ねることで、成長のスピードが速まるようです。もちろん若手のうちからこれらの経験に恵まれるのは簡単ではないかもしれませんが、松尾氏のお話では「例えばそのプロジェクトの隅っこの方にいて、『変革』のにおいをかいでおくだけでも経験になる」とのことでした。『連携』『育成』もまた然りです。

さて、このコラムの本来のテーマに立ち戻った時に考えたいことがあります。それは「女性管理職は、管理職になるまでの間に充分な『良質の経験』を積むことが出来ていたか?」ということです。これについては、次回掘り下げていきます。

(※)プログラム発表会「若手社員の育成推進メソッド」実施レポート
http://www.cicombrains.com/consulting-services/new-young-employee/report.html

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