- 加藤 円サイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント
去る2022年3月3日、サイコム・ブレインズでは「グローバル人材育成におけるレジリエンスの強化とマインドフルネスの活用」をテーマとしたオンラインセミナーを開催いたしました。今回のセミナーでは、グローバルな環境で働く日本人が陥りがちな課題について「日本人の持つ文化的特徴」と「心の状態」という二つの側面から解説しました。また、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の実践プログラムを修了し、研修登壇の実績を持つ岩﨑 裕也氏をお招きし、これらの課題を解決する上でのマインドフルネスを高めることの有効性についてお話いただきました。
イベント概要
『グローバル人材育成におけるレジリエンスの強化とマインドフルネスの活用~日本人の課題としての「心の部分」へのアプローチ~』
これからの人材育成には「強い心の育成」も必要
当日は企業の育成担当者様に加え、事業部門や、キャリア開発・海外拠点のご担当者様にも多くご参加いただき、マインドフルネスへの関心度の高さを実感しました。今回はグローバル人材育成におけるマインドフルネスの活用について取り上げましたが、グローバルな現場に限らず、変化のスピードが速く、VUCA時代を生きる我々にとって、ストレスや逆境に晒されても再起できる心の強さは、これまで以上に重要になってきています。マインドフルネスについて理解を深め、企業が取り組む施策として「心の育成」の必要性を感じていただくきっかけになればと考え、今回のセミナーを開催いたしました。
セミナー冒頭では、グローバル人材育成の研修で受講者の方からよくお聞きする声や悩みをとりあげ、それらの背景を「日本人の文化的特徴」から深堀しました。「ホフステードの6次元モデル」を用いた分析では、日本人は「完璧主義」「リスクを回避する」といった傾向が他国と比べて高いとされています。こういった傾向が、グローバルな現場においては「流暢な英語を話せなければ」「失敗は許されない」など、過剰に他者の目を気にしたり、仕事にのめりこむ状態につながること、ひいてはビジネス上のパフォーマンス低下につながることを解説しました。
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OPINIONS「日本の文化が、私たちの自信の無さに影響を与えている? ~グローバル環境における自己肯定感の高め方(前編)」
MAS(男性的文化)のスコアが高い文化では、成功・完璧さの追求と同時に、失敗やミスを恐れる傾向も強くなる。グローバルビジネスにおいては、予測不能、思い通りに進まない事態も多く、大きなストレスや自己肯定感の低下につながることも。
ファーストステップは「自分を俯瞰して見ること」
次に、上述の問題を解決するアプローチのひとつとして「マインドフルネス」を紹介しました。セミナー前後に皆様からお寄せいただいたアンケートによると「マインドフルネスという言葉を聞いたことはあるが、その正確な定義や仕事に与える影響については聞いたことがない」という方も意外と多いようです。マインドフルネスとは、今の自分の状態(思考・感情・感覚)に注意をむけて気づくことです。まだ起こっていないことが不安だ、他者の目に応えなければ、といった思いから解放されるためには、まずはそのような思考や感情をもっている自分自身を俯瞰して見ることが第一歩になります。
例えば、マルチナショナルチームで進めるプロジェクトのリーダーでありながら、自分の英語力不足から、外国人メンバーにネガティブフィードバックができない状態であるとします。そのような時に「今、流暢に英語が話せないことに劣等感を持っている自分がいる」「変にネガティブなことを伝えて、英語でまくし立てるように反論されることを恐れている自分がいる」と客観的に自己を認識し、その自分を受け入れることで、「重要なのは流暢な英語で話すことではなく、メンバー全員が同じ方向を向いてプロジェクトを進められることだ」と意識を切り替え、「多少たどたどしい英語でもいいので、まずプロジェクトの方針をメンバー全員と再確認しよう」などと、本来とるべき行動に目を向けられるようになります。これを心理的に柔軟な状態と言います。セミナーでは、この簡単な「ラベリング」というワークを通じ、距離をとって自分を見ると、心理状態がどのように変わるかを体感いただきました。
心理的柔軟性はトレーニングで高めることができる。「攻めのマインドフルネス」実践を!
上述のワークはあくまでも一例ですが、このように、マインドフルネスであるための心理的柔軟性はトレーニングを通じて高めることができるというのが当社の考えです。マインドフルネスの実践は、仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えるものであり、また、科学的な研究からもその効果が実証されています。しかしながら、日本でのマインドフルネスに関する取り組みは、ストレス解消や生産性向上などに限定された例が多いように思います。アンケートでは「心理学的なトレーニングでパフォーマンスを上げるという点が興味深かった」「様々な角度からのアプローチがあることを知った」というコメントもいただきました。マインドフルネスの効果を最大限活用するためには、単なるストレス軽減のツールと捉えるのではなく、企業の戦略を実行・推進するためのスキルセットのひとつとして習得、向上していくことに大きな意味があるのではないでしょうか。
中でも、「語学力の優劣が明確」「価値観の違いが大きい」「予測できない事態への対応が多い」など、ストレスが多く、感情のコントロールが大変なグローバル環境においてマインドフルであることは、ストレスの軽減はもちろんのこと、自分や相手の強みを活かし、クリエイティブで建設的な提案を導き出す手助けになるはずです。問題解決や、マイナスをゼロにするための「守りのマインドフルネス」だけでなく、社員ひとり一人が強みを最大化して生き生きと働くための「攻めのマインドフルネス」を実践してみたいとお考えの方は、ぜひサイコム・ブレインズのコンサルタントにご相談ください。
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加藤 円Madoka Katoサイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント大学卒業後、児童英語講師、高校非常勤英語講師、留学コンサルタントを経て当社へ入社。シニアプランナーとして、英語基礎力強化、TOEIC対策研修、スピーキング力強化研修などの企画、教材開発、研修クオリティー管理、講師マネジメントに携わった。現在はシニアコンサルタントとして活躍中。オーストラリア、イギリス、アメリカの滞在経験から、英語をコミュニケーションツールとして、様々な国の人とディスカッションすることのおもしろさと難しさを実感する。自分の経験を生かして、英語学習についての悩みを共有することで、グローバルな環境で活躍する受講者の応援をしたいと考えている。
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