2018年6月14日(木)に開催済みのイベントです。
開催レポート
サイコム・ブレインズでは、去る2018年6月14日(木)に、「アセアン地域における異文化理解とマネジメント勉強会」を開催しました。勉強会のタイトル通り、東南アジア諸国へ進出・展開している、もしくは赴任者を送り出している日本企業の人事・人材開発部門、海外事業部の方々が多数ご参加くださいました。
価値観の理解をベースにしたコミュニケーションを取る
アセアン諸国は、欧米などに比べれば日本に近しい文化圏にありますが、地理、歴史、宗教、教育、言語といった要因から、国ごとに異なる文化的価値観があります。この文化的価値観は、本来目に見えにくく、私たちの中に無意識に刷り込まれているものですが、ヘールト・ホフステード博士の調査・研究によって、6つの次元で数値化され、国別の違いを比較することができるようになりました。これを「ホフステードの6次元モデル」といいます。
「ホフステードの6次元モデル」は、国境を超えたビジネスを行う際のバイブル(指針)として世界中の多くの企業で活用されています。同モデルで示された価値観の差異の「意味」を読み取れるようになれば、外国人の考え方や行動をどのように理解し、コミュニケーションを取ればよいのか、海外の顧客や取引先との交渉を円滑にすすめるための手がかりを得ることができます。
ホフステードの6次元モデルとは
異文化・組織文化研究の権威であるオランダの社会組織人類者ヘールト・ホフステード教授が、IBMの社員(72か国・11万 6千人)を対象に行った調査、およびその後の長年の研究により確立した理論です。
勉強会では、この「ホフステードの6次元モデル」をもとに、自国と相手国との価値観の違いを適切に認識・理解し、ビジネス上の取引や職場での業務をすすめることの重要性について、2部構成でお伝えしました。
第1部では、サイコム・ブレインズが提供する「異文化マネジメント研修―ホフステード国民文化の6次元モデルアプローチ編」の概要を紹介したあと、「ホフステードの6次元モデル」のパートを中心に実際のプログラムのダイジェスト版をご体験いただきました。「6つの次元がそれぞれ意味するところは何か?」「日本人の傾向はどうなっているのか?」「なぜ異文化間のコミュニケーションは難しいのか?」といった内容について、ポイントを絞って解説しました。みなさん日本人の価値観が外国の多くの国と大きく異なっていることに驚いておられたようです。
第2部では、横浜市立大学の大西教授から、自らアセアン各国に赴いて現地企業を実地調査した結果をご披露いただきました。「それぞれの国で好まれるリーダーシップの在り方」や「コンフリクトへの対処の仕方の違い」、「会社(仕事・職場環境等)に関する満足度調査」などについて解説をいただき、参加者からは「ホフステードの6次元モデルに加えて、異文化間の現実について一歩踏み込んだリアルなケース紹介が非常に参考になった」という感想をいただきました。講演というより非常にインタラクティブなセッションで、日本人海外赴任者、もしくは海外事業の責任者、あるいは人材育成担当者として、それぞれの参加者が抱える課題や疑問に対して、大西教授ご自身の豊富な知識と経験、長年の調査・研究に基づく解説とアドバイスは、たいへん説得力があり、こういったイベントの開催の意義を感じる勉強会でした。次回以降のイベント情報はコチラに掲載いたします。ご期待ください。
講師紹介
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大西 純Jun Onishi横浜市立大学教授・経営学博士
オハイオ大学、青山学院大学卒業後、ニコン、大和証券、リョービに通算20年程勤務。ニコン在職時にシンガポール、香港に駐在。その後、起業しタイを拠点に貿易業を営む。仕事の傍ら、チュラロコーン大学、タマサート大学で修士号を修得し、アジア工科大学院で国際ビジネスの博士課程を修了(Ph.D. international business)。その後、マヒドン大学経営大学院で起業学科長を5年勤めたのち帰国し、国立大学法人弘前大学で国際交流センター長を務める。公立大学法人横浜市立大学国際総合科学部経営学コース教授として現在に至る。専門は人的資源管理で、研究の中心はアジアに進出している日系企業における現地人と日本人管理職との職場でのトラブルを「職場摩擦」と名づけ、その原因と解消法を緻密な現地調査に基づいて明らかにすることである。これまでに60本以上にわたる論文、学会発表、講演があり、異文化マネジメントの専門家として活躍。日本語、英語、タイ語、スペイン語で講義を行うことができるポリグロットである。主な著書に「タイ駐在のためのタイ入門」「Working Japanese in Southeast Asia」等がある。
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参加者の声(一部抜粋)
当日実施したアンケートで頂戴した受講者の声(抜粋)をご紹介します。
Q.参加した理由
- 中国においては20年超の事業運営で異文化理解とマネジメントという観点では、支障ない状況であるが、この度インドネシアでの事業取り組みが開始され、問題意識が生じたため。
- ASEANでのビジネスに今後取り組んでいくため、情報収集がしたかった。
- 以前、日本人が東南アジアに行く際の教育を担当していたが、改めて学び直し、東南アジアのメンバー教育に関するアイディアを得たかった。
- 東南アジアを含めた世界各国の現地を見る立場となり、経験のない東南アジアについて学びたかった。
- 今後、世界へ進出していく中で、各国への理解を深めたかった。
- アセアン地域に事業会社を有し、今後一層赴任者が増えることが見込まれる。また、日本にいながらアセアン地域の企業と折衝する社員も多いため、アセアン(もしくはその中の1国)の異文化理解研修の立ち上げを検討している。
- 業務上、東南アジアへの進出が進んでおり、各国の雇用員とのコミュニケーションが増えたため。
- 今後海外に派遣する社員に対して、海外赴任前研修の導入を検討しているため。
- 現在自分自身韓国に駐在しており、アジア圏の文化の違い、コミュニケーションの取り方について聴講したかったため。
Q.どういったポイントが参考になりましたか?またはどのような形で活用できそうでしょうか?(抜粋)
- 中国においては20年超の事業運営で異文化理解とマネジメントという観点では、支障ない状況であるが、この度インドネシアでの事業取り組みが開始され、問題意識が生じたため。
- ASEAN諸国の人々の気質や行動特性を理解することができた。ASEANに駐在予定の社員やビジネス関係がある社員向けの研修として大いに活用できそう。
- 東南アジアのメンバーからみた日本との違いを知ることができた。ナショナルスタッフ研修で活用したい。
- 現地化と異文化間職場の摩擦についての話が非常に参考になった。
- 東南アジアに限らず、異なる文化的背景を持つ人たちと接する際のヒントをいただいた。
- 質問に対してほぼ明解に回答できていた。話が一定の枠組みに収まらない、フレキシブルなもので、当方のリクエストに柔軟に対応いただけそう。
- アセアン諸国の特徴が分かってよかった。ASEANに進出する際の参考としたい。
- ホフステードの理論を理解したうえで大西講師の経験を踏まえた講義を伺うことができ、大変有意義だった。検討している研修の構成をイメージするにあたり非常に参考になった。
- ホフステードの6次元モデルを初めて知った。非常に参考になった。大西先生の講義の進め方が聞きやすく、分かりやすかった。
- 現在、赴任者に6次元モデルをベースに開発されているオンラインアセスメント「Culture Compass」を利用中。今回の内容は今後、赴任者の育成を各部門に薦める際の参考としたい。
- ホフステードの6次元モデルのフレームワークが興味深く、大西教授の講義では各国の歴史背景や文化について学ぶことができた。海外の現地社員を日本に招いて、本社での研修を行う際に、受け入れる側の日本本社の社員に対する事前研修に有効だと思った。海外派遣前の研修だけでなく、中堅社員の選抜研修にも活用できると思う。