セミナーレポート

事例から学ぶ、HRBPに求められる役割と能力~自社に適した制度の構築、登用、育成~

  • b! はてぶ
2018.08.10

2018年7月19日に、ギャップジャパンとカゴメよりスピーカーをお招きし、「事例から学ぶ、HRBPに求められる役割と能力」を開催いたしました。その概要をお伝えします。

日本でも年々導入が進むHRBP

  • サイコム・ブレインズでは、2016年からHRBP(人事ビスネスパートナー)をテーマとしたセミナーを毎年開催している。戦略人事や人事としてのキャリアに関わるテーマであることから、毎回ご案内開始からすぐに定員に達するほど、多くの方にご参加いただいている。今年も40名以上の方にご参加いただいた。
  • このセミナーでは、HRBPとしてご活躍されている方、あるいはHRBPを統括する人事部長・CHOの方を、毎回2つの企業から講師としてお招きしている。1社は外資系企業から、もう1社は日本企業から、というスタイルにもこだわっている。HRBPが以前から世界各国の拠点で導入されている外資系企業だけでなく、導入間もない日本企業の試行錯誤の事例も参加者の関心事ではないかと考えたからである(2016年はGEジャパンとLIXIL、2017年はアマゾンジャパンと資生堂ジャパンから講師をお招きした)。
  • セミナーの冒頭では、インタラクティブツールの「UMU」を活用し、「自社でHRBPを導入しているか?」を参加者に聞いている。2016年はHRBPを導入していない企業の方が多く、2017年はちょうど半々。今回は既に導入している企業が約6割、近々導入する予定を含めると約7割という結果になった。私の肌感覚でも日本の企業においてHRBPの導入は進んでいると感じる。

UMUによる参加者アンケート

現場経験者がHRBPに。店舗と人の課題に対し、短期・長期の視点に立って支援(ギャップジャパン)

  • さて今回のセミナーだが、最初にギャップジャパン人事部ディレクターの水上氏、シニアマネージャーの服部氏よりご講演頂いた。ギャップジャパンでHRBPは「HRジェネラリスト」と呼ばれている。HRジェネラリストは本社および各ブランドに配置されている。
  • 変化の激しいビジネス環境の中で、今までのビジネスモデルや成功体験が通用しなくなってきており、店舗で求められるサービスの内容も変化している。そのような中でHRジェネラリストには、現場(店舗)の課題を共有し、その課題解決のための「人」の面での長期・短期の戦略を立案し、それを具体的なアクションに落とし込むことが求められている。店舗マネジャーは短期の数字の推移に目が行きがちなので、HRジェネラリストは長期の視点を持った採用、育成、評価を、現場と連携しながら進めている。
  • ギャップジャパンのHRジェネラリストと、昨年・一昨年に登壇頂いたGE、アマゾンジャパンのHRBPでは、大きく違う点が1つあった。それはGEやアマゾンジャパンのHRBPは人事のキャリアが長く、いわゆる人事の専門家が担っているが、ギャップジャパンでは現場の社員から登用している。水上氏はファイナンス、服部氏は店舗出身であり、それぞれの部門でマネジメントを経験している。ギャップでは自身のキャリアは自身で築いていくというカルチャーが浸透しており、お二人とも自ら希望して現在のポジションに就いている。現場で感じていた「HRBPにこんな役割を担って欲しい」「こんな関わり方をして欲しい」という現場の目線を大切にしている。

幹部育成の一環としてHRBPを経験(カゴメ)

  • カゴメがHRBPを導入したのは1年半前であり、今回のセミナーでは常務執行役員CHOの有沢氏から導入の経緯からお話して頂いた。現在カゴメのHRBPは、営業部門に1名、生産部門に1名、研究開発・本部に1名の3名。HRBP導入の目的は、カゴメがグローバル企業としてさらなる成長をめざすべく、人材・組織両面での成長を支え促進すること。そのような背景から、HRBPには社員の自立的なキャリア開発を支援する、という役割を強く持たせている(ちなみに3名ともキャリアコンサルタントの資格を保有している)。もちろん現場の人事課題を明確する、あるいは現場と経営とのブリッジを強化する役割も担っている。
  • カゴメもギャップジャパンと同様、HRBPを現場から登用している。有沢氏は「現場経験が豊富であり、人事課題の解決に資する問題解決能力と、本部・経営をつなぐ人脈、個人の成長を心から支援できる人間性を備えた人材を登用している」とのこと。また非常にユニークなのは、HRBPを経験することそのものを幹部育成の一環と捉えている点である。HRBPを数年経験した後に現場に戻ることを前提にしており、これは外資系にはない仕組みであろう。これには「会社を牽引していく人材には、人事戦略の重要性をよく理解してもらいたい」という有沢氏の意志が込められている。

自社に適した制度の構築、登用、育成

  • サイコム・ブレインズでは5年前より『次世代戦略人事リーダー育成講座』を毎年開催している。参加者にはHRBPの方も多いが、外資/日系の違い、業種の違い、一人のHRBPがカバーする社員数など、どの企業もそれぞれの事業や組織により求められる役割が違う。HRBPの導入を検討するにあたり、今回のようなセミナーを通して他社の事例を知ることは有意義ではあるが、他社の成功事例をそのまま導入してもうまくいかないだろう。どんな役割を担わせ、どんな人にアサインすれば良いか、自社の事業環境・戦略・組織文化をふまえたうえで考えるべきなのだと思う。
  • ただ、どのような企業にも共通して言えることは、HRBPにはビジネス感覚が優れている人、人間的魅力とコミュニケーション能力がありリーダーシップを取れる人、そして日々自分の頭で考え学び続けることができる人が求められている、ということである。
  • 江島 信之 Nobuyuki Ejima

    江島 信之Nobuyuki Ejimaサイコム・ブレインズ株式会社 ソリューションユニット シニアコンサルタント

    同志社大学で心理学を専攻。卒業後、ユニチカを経て、東証2部に上場している独立系コンサルティング会社に入社。大手上場企業を中心に雇用調整コンサルティングからマネジメント研修、営業研修、覆面調査を使ったCS向上研修等幅広く組織活性化の支援を行う。在職中に同社が出資していた、メンタルヘルス専門IT会社の株式会社ライフバランスマネジメント社(現アドバンテッジリスクマネジメント社)にボードメンバーとして参画。その後エーオンコンサルティングジャパン株式会社(現エーオンヒューイット)入社。マーケティング、営業、中堅社員向けの研修の講師、コミュニケーション研修等のコンテンツ開発などを行う。2012年サイコム・ブレインズ入社。営業部門の責任者として会社の売上全体を管理し、営業メンバーの育成やマーケティングを行っている。 京都府出身。趣味はゴルフ。最近は自宅がある浅草界隈の散策をして休日を過ごす。

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