セールストークは文化圏によって変わる
さて、メンタルイメージは、それぞれの文化圏におけるビジネスの進め方を理解するのに役立ちます。
例えば、イギリスとオランダの顧客それぞれに、自分の会社の商品を売り込みに出張に行くとします。地理的には近い国ですので、同じセールストークだけで済ませてしまいそうなところですが、2つの国は別の文化圏に属しており、持っているメンタルイメージが大きく違うので、話し方や商談のシナリオをかなり変える必要があることがわかるでしょう。
具体的には、「競争」の文化圏に属するイギリスの顧客に対しては、効率重視なのであいさつや背景説明はなるべく省略してすぐ本題に入ります。また、相手にとってのベネフィットの大きさを強調して伝えることが効果的です。一方、「ネットワーク」の文化圏に属するオランダ人は、あまり誇張された話には「不信感」を抱くので注意が必要です。また、だれとでも平等な関係にあることに心地よさを感じる人たちなので、友達のようなフランクなアプローチで、多少は個人的な話をすることも効果的でしょう。
さらに、足を延ばしてポルトガルに行くことになったとしたらどうでしょうか?ポルトガルは「ピラミッド」の文化圏で、個人としての人間関係が極めて重要ですから、まずは顧客に紹介してくれる仲介者を見つけることが大切でしょう。またヒエラルキーが強いので、自分が話をしている担当者に決定権がない場合は、さらに上層部へ何らかの形でアクセスしなくてはならないことも覚悟しておいたほうが良いでしょう。
今回、3日目の外部にオープンされているカンファレンスでは、それぞれの「文化圏」のメンタルイメージに基づいて、「良い第一印象を作るには」というテーマでプレゼンテーションが行われました。
ドイツに代表される「機械」文化の人には専門性や勤続年数の長さ、資格などをアピールするのが良い、フランスやスペインの属する「太陽系」文化ではエレガントさや名の知れたブランドや学校・団体等との関連が重視され、インドや中国の「家族」文化では、まずは信用を得るために時間を投資することが必要なので、共通の友人や紹介者との関係、自分の経歴などを話しながら、共通点をなるべく多く見つけることが大切である等、「文化圏」を使うことで実際のソリューションを導きやすくなることが、わかりやすく説明されていました。
通常、我々が実施している異文化マネジメント研修は1日しかないこともあり、このメンタルイメージを取り入れるのが難しかったのですが、今回話を聞いて、より多くの国と接点のある方や、多国籍のナショナルスタッフに向けた研修、じっくり取り組める複数日の研修などでぜひ使っていきたいと改めて思いました。さらに、日本本社の担当として世界各地での研修実施を運用をしたり、システムの入れ替えを推進したりといった、グローバルプロジェクトにかかわる方々に非常に有効なツールであると思います。現在、グローバルプロジェクトがうまくいかなくて悩んでいらっしゃる皆様、文化の違いは経験ではなく、知識と分析で解決できる部分も大きいのです。ぜひ、「6次元モデル」と「メンタルイメージ」をつかって、文化の問題を科学的に考えてみませんか?