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太田 由紀
サイコム・ブレインズ株式会社
ファウンダー / プログラムディレクター 専任講師
新型コロナウィルスの蔓延が、人と人とのコミュニケーションや生活様式のあり方、そしてビジネス環境の全てを一変させてしまいました。この事態において、「環境の変化に対応せよ!」と繰り返し唱えていても、何も変えることはできません。私たちは、具体的に何を考え、どのように行動すれば良いのか、ウィズ・コロナの時代をサバイブしていくために必要な能力は何なのか。そこにおいて、ダイバーシティはどのような意義を持つのか。今回、多数の日系・外資系企業で経営に携わり、企業変革を進めてきた経営のプロフェッショナルである上田昌孝氏にお話を伺います。
「個人がバラバラな変化」ではなく「マネジメントされた変化」が必要
- 企業が生き残るためには有能な若い人材を採用する必要があるわけで、そう考えると国籍や性別にとらわれている場合ではないのは当然ですよね。その上で、組織に必要とされ続けるのは、どういう人材でしょう?
- 少なくとも、その人が在籍している会社以外に転職できるという市場価値を持っていないとダメです。そして、自分の市場価値を上げようと努力し続けられる人。それから、自分のことを客観的に見ることができて、その尺度がはっきりしている人。自分は仕事ができると勘違いしている人がマネジメントする側にとっては一番難しい。同様に「自分は仕事ができないんです」と言ってチャレンジを億劫がる人や、能力があっても変化を嫌う人、自分のポジションを維持したがる人も、組織としては困りますよね。
- なるほど。それでは、これから私たちに必要とされる能力・スキルは何でしょうか?
- リーダーシップとコミュニケーション能力が重要です。よく聞くのが、営業成績が凄く良いからその人を部長にした瞬間に、部がぶっ壊れたという話。結局、変化し続ける組織といっても個人がバラバラに変化するのではなく、「マネジメントされた変化」が必要なんです。だからチームが大切で、チームをまとめるリーダーシップとコミュニケーション能力は欠かせないと思います。
- たとえばダイバーシティ研修で、チームのメンバーの市場価値を的確に捉えることの大切さや、見極めるためのコミュニケーションの仕方を伝えるとしたら、どのようにしますか?
- そうですね……参加者の90%が男性の部長クラスに対してダイバーシティの研修をする場合、その人たちにダイバーシティの話をしても、恐らく「俺には関係ない」となると思います。なぜなら「自分の部下は男ばかりで、日本人ばかりなのに、その中でダイバーシティといわれても…」という話になる。だから現実の中で意識を変えていくというトレーニングをやるのであれば、どちらかというと、法律的な建てつけの中で差別はダメだという話をしたうえで、良いコミュニケーションと悪いコミュニケーションの実例をロールプレイして、本人たちの日常の言動を変えるお手伝いをするのがメインにならざるを得ないかもしれない。それ以上のことを求めようとしたら、今日お話したような経営者の視点からダイバーシティを理解させるような研修をやるべきだと思います。