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小西 功二
サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
コロナ禍で多くの企業がリモートワークに移行しました。緊急事態宣言の解除に伴い、出社への揺り戻しも起きましたが、第3波の襲来と共に、リモートワークに逆戻りという企業も少なくありません。既に、企業にとっても従業員にとっても、リモートワークには一定のメリットがあることが実感されており、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えても、完全リモートもしくはオフィス勤務と組み合わせながらのリモートワークは、定着していくものと想定されます。一方で、慣れないオンライン環境や、個人作業に戸惑い、なかなか思うようなパフォーマンスが出せず、疲弊している従業員も少なからず存在します。リモートワークが長期化、定着していく今後、企業はこの問題に対処していく必要があるでしょう。今回のコラムでは、リモートワーク下におけるメンバーマネジメントはいかにあるべきか、その要諦と具体的なアクションについて、考察したいと思います。
リモートワークは「強制的な権限移譲」状態だから…
前編では、リモート環境にシフトする中、組織および従業員の課題を解決するために、マネジャーが、メンバーのセルフマネジメントをサポートすることが必要だという話をしました。では、そのためにマネジャーが実行すべきことは、具体的にはどういったものでしょうか。後編では、以下の5つのアクションを提案いたします。
まず、第一に、メンバーのセルフマネジメントのよりどころとなるビジョンを構築し、チームに浸透させることです。リモートワークとは、ある意味、強制的な権限委譲とも言えます。メンバーが迷うことなく、個々の業務を設計し、現場で意思決定できるように、マネジャーは、その判断基準となり得るチームのビジョンを策定・浸透させておく必要があります。これは、リモート化により、組織や業務の全体像が見えづらくなっている中、「我々はどこに向かっているのか」ということを指し示すことでもあります。また、チームとして同じ方向を向き、一体感を醸成するためのツールにもなります。
第二は、プロセス管理を意識したPDCAをデザインし、メンバーのタスクおよび目標管理を支援することです。リモートワークでプロセスが見えづらくなった分、特に、プロセスの可視化・管理を意識したPDCAをデザインし、メンバーの日常のタスクに落とし込む必要があるということです。この、プロセスの意識的な可視化・管理の方法ですが、具体的には、①測定可能なゴールを設定する②ゴール達成までのプロセスを細分化する③プロセスの中にあるTO DOを行動レベルで策定する④プロセスの進捗を判断・評価するためのKPIを設定する、といった方法が考えられます。
仮に1か月で達成を目指すタスクがあるとすると、PDCA設計のポイントは、①1か月かけて達成することに意義のあるゴールを設定すること、②そのゴール達成に向けて、プロセスを何段階に設定するのが適切か決めること、③各プロセスをクリアするハードルの高さ(はじめは低く、プロセスが進むにつれ高くなど)を設定すること、などです。単純な話ではありますが、個人で設計するとなると、意外と難しいものです。PDCA設計の巧拙が成果を左右するため、マネジャーがサポートをおこなう必要があります。このPDCA設計について上司・部下間であらかじめ共通認識ができていれば、メンバーは安心して業務に邁進しやすくなります。
第三は、1 on 1面談の実施です。リモートワーク下の1on1面談では、不足しがちなコミュニケーションや情報共有をより手厚く補う、という点を特に意識して実施することが重要です。例えば、顧客面談や社内ミーティングなどの予定の合間にある、断片化した時間をうまく使えるようタスクを細分化しつつも、目指すゴールを見失わないように、PDCAの進捗を問いかけます。その際、先ほど述べたPDCA設計で見える化されたプロセスが進捗していることを確認し、しっかりと承認してあげることが重要です。さらに、個人の作業時間が就業時間外に押しやられないように、週次のタスクマネジメントをサポートします。1on1面談の際は、メンバーの成熟度やタスクの難易度に応じて、ティーチング、コーチング、エンパワーメントを使い分けると良いでしょう。リモート環境下でメンバーの動きが見えづらい分、しっかりと「聞き出す」必要がありますので、1 on 1の頻度は高めに設ける必要がありますが、当人の作業時間を奪わないよう、1回あたりの面談時間は短くすることがコツです。