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座談会

2018.05.22

3人の人事パーソンが本音で語る、 人事の現在地と未来 (前編) (前編)

  • b! はてぶ
江島 信之 Nobuyuki Ejima
江島 信之 サイコム・ブレインズ株式会社
執行役員

“誰も拾っていないもの”はないか? 信頼とつながりを強化する

水越 亜樹 氏
アステラス製薬株式会社 水越 亜樹 氏
  • 江島 信之
    先ほど岡部さんがおっしゃっていたように、会社ごとの違いは当然ありつつも、人事担当者の悩み、人と組織に関する課題には共通する部分も多いですね。そういった課題を解決するべく、他社の事例にも学びながら色々な施策を考えて実行するものの、実際のところはなかなか上手くいかなくて、悶々としている人事の方も多いです。施策の成功・失敗を分けるポイントって、どこなところにあると思いますか?
  • 岡部 峰之
    上手くいかない時というのは、人事だけの視点になっているケースが多いように思います。たとえば昨年、我々も働き方改革ということで、私がプロジェクト全体をリードしました。成果も出て残業が減ったところもあるのですが、チェンジマネジメントをする中で上手くいかないことも多々ありました。振り返ってみると、上手くいかない時というのは、ビジネスのストーリーとして「事業や経営にどれだけ資するものなのか?」ということを語ることができていなかった。最終的に部門長、本部長、役員クラスを巻き込むことができないと、その下にいる何百人という社員の働き方を変えるのは難しいです。
  • 佐藤 拓也
    私自身の経験を振り返ると、「簡素化されているかどうか」という要素もすごく大きいと思います。人事はよく知っているけど、その他の社員が複雑だなと少しでも思ってしまったら、見向きもされない。案内文書を配っても読む気もしない。ワクワクしない。だからいかに簡素に、シンプルにするかというのは、人事の知恵の使いどころですね。

    もう一つ、これはユニリーバの島田さんの言葉ですが、「心配じゃなくて信頼」だと。「あれをしたら、こうなってしまうかも」みたいな心配はさておき、とりあえずやってみて、駄目だったら振り返って、学んで、それを活かせばよいという発想は、すごくいいなと思います。
  • 岡部 峰之
    今、弊社の人事の中でも「トラスト」という言葉がすごく出てくるんです。上司・部下の間もそうですが部門間、横のつながりですね。「あそこは何をやっているのか分からない」とか「余計な資料を作らせやがって」とか、そういったことでトラストが無くなってくると、組織がうまく機能しません。
  • 水越 亜樹
    私が考える弊社の課題も、横のつながりですね。製薬業界では「パテント・クリフ」、つまり特許が切れてジェネリックによって売上が減る、というのを克服するために、イノベーションをいかに推進するかが課題になっています。イノベーションといっても小さいものから大きいものまでありますが、いずれも全く違う要素の組み合わせが今まで想像していなかった新たな何かを生む、みたいなところがありますので、「他の人がやっていることは知りません」ではなく、興味を持つというのが大切なんです。

    弊社では数年前に「プロジェクト・ポテンヒット」というものがありました。これはどこの部署にも拾われずに落っこちていて、でも意外と重要なものを見える化するとともに、社員一人ひとりのマインドセットを改善し部門間連携を推進する、というものでした。それによって解決できたこともありますが、つながりという意味ではまだまだ強化が必要です。
  • 江島 信之
    つながりを強化するために、人事として何か具体的な取り組みはされていますか?
  • 水越 亜樹
    2014年から組織開発の取り組みとして、日頃接点が無い部署のメンバーがディスカッションする場を設定しています。最初はマネージャーをターゲットにして「マネージャーだったら共通の悩みがありますよね。それを共有しませんか?」みたいな感じで。初年度は外部ベンダーにお願いしながら人事がファシリテーションしましたが、それ以降は企画や運営をする人を各部門から出してもらっています。昨年度は100%自社の活動とし、企画のみならず当日のファシリテーションも全社から集まったマネージャー自身に実施いただきました。
  • 江島 信之
    イノベーションという経営課題に対して、人事が現場を俯瞰して、つながりが弱い部分を補強していくというのは、まさに組織開発の仕事ですね。「ポテンヒット」という考え方も非常に面白いです。「誰も拾っていないけど重要なもの」を見つけて拾っていくというのは、イノベーションが求められるR&Dだけでなく、人事にとっても必要な発想ではないでしょうか。

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