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イベントレポート

2021年12月21日開催オンラインセミナー「LGBTQを切り口に考える、2022年の企業のダイバーシティ推進~D & I から DE (Equity) & Iへ~」 LGBTQを自分事として考える
~「構造的不平等」への気づきから始まる、職場における「エクイティ」の推進~

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2022.04.27
安田 絵理 Eri Yasuda
安田 絵理サイコム・ブレインズ株式会社
コンサルタント

去る2021年12月21日、サイコム・ブレインズでは「LGBTQを切り口に考える、2022年の企業のダイバーシティ推進~D & I から DE (Equity) & Iへ~」をテーマとしたオンラインセミナーを開催いたしました。当日は、LGBTQに関する取り組みを通して、マイノリティ層における「見えにくい」「理解されにくい」状況を可視化して、マイノリティやマジョリティといった枠を超えたすべての社員が組織の一員として存分に力を発揮していくための方法を、認定特定非営利活動法人ReBitの中島氏とともに考えました。

イベント概要

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DE&Iの“E”の概念は理解できていますか?

今回のセミナーでまず知って頂きたかったのは、「DE&I」の”E”とは何か、ということです。セミナーの冒頭ではまず、サイコム・ブレインズ太田が「D(ダイバーシティ)→D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)→DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」の変遷について、DE&I領域のプログラムディレクター&講師としての経験を踏まえてお伝えしました。

太田 由紀 Yuki Ota

日本において多くの企業が、ダイバーシティ推進の第1歩として取り組んでいるのが「ジェンダーダイバーシティ」、特に女性のエンパワーメントです。そしてこれを推進する中で注目されるようになったのが「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。

「アンコンシャス・バイアス」はすべての人が持つものであり、それ自体は良くも悪くもないものです。しかし、特定の属性や人、状況に対して、「みんな」「いつも」「絶対」などのように、先入観や思い込みから“例外を認めない”、 “ひとくくりにして捉える”といったアンコンシャス・バイアスは好ましいものではなく、そうした考え方が固定化していると多様性を認められなくなる、という文脈で「アンコンシャス・バイアス」という言葉への注目が集まりました。

また、「アンコンシャス・バイアス」に対する注目度が高まるにつれ、「ダイバーシティ=多様性が存在する」から「D&I=多様性が存在するだけではなく、多様性をみんなが受け入れる」ことが大事、つまり、「受け入れること=インクルージョン」ができなければ多様性を生かすことはできない、と考えられるようになってきました。

ところが、「インクルージョン」については「逆にマイノリティ優遇(逆差別)になっていないか?」「個人のわがままを何でも受け入れるのか?」という疑問の声がしばしば聞かれるようになりました。そうした中、2020年の世界経済フォーラムで「ダイバーシティ、エクイティ、およびインクルージョン」としてこれらの課題が取り上げられたことをきっかけに、「エクイティ」という言葉が注目されるようになりました。Equity(エクイティ)は「公平性」と訳される通り、Equality(イクオリティ)=「平等」の概念とは違います。この概念の違いに関する解説を通して、インクルージョンの在り方やエクイティの重要性が認知されるようになりました。

「エクイティの実現」とは、例えば会議の場で、誰のどんな発言であっても「検討すべき対象」として分け隔てなく聞き入れられている、ということ。

ReBitの中島氏は、上記太田のコメントを受けて、D、E、I、それぞれが、組織の中で「実現している」とはどういった状態であるのかを、次のように話されました。

中島 潤 Jun Nakajima

特にコロナ禍において、「意思決定層におけるダイバーシティの促進」が、危機管理の力やレジリエンス(回復力)といった組織の力に大きな影響を与えるのでは?という観点で、ダイバーシティと組織力のつながりが注目されるようになりました。色々な人の意見がその場に出されていて、かつ聞き届けられる状態(=インクルージョンとエクイティ)がとても大切である、と認識されるようになったのです。

DE&Iを会議の場に例えるなら、ダイバーシティが、多様な人が会議の場にいる状態だとすると、インクルージョンは発言権が与えられる、発言ができる状態。そして、この発言が検討すべき対象として分け隔てなく聞き入れられる状態がエクイティです。つまり「〇さんの発言は別に気にしなくても良いよね?」なのか、「〇さんの視点からだとそんな風に感じるのか。それなら一度検討してみよう」という状態になっているかどうか、という違いです。このように「発言する人がだれであろうとその内容を課題として認知し、検討し、結果として問題が解消されれば、私たち全員にとってより良い結果が生まれる」と社員が信じている状態が「エクイティの実現」であり、これが組織力に影響する、と考えられるようになってきました。

ダイバーシティ推進の重要性が注目されるようになって長く経ちますが、「DE&Iが実現されている状態」とは具体的にどのような状態であるのかについては分かりづらい部分もあった中で、この説明で納得感を得た方も多いのではないでしょうか。

構造的不平等への気づきから、具体的な取り組みまで。LGBTQに関する取り組みを1つのきっかけとして活用して欲しい。

次に、LGBTQに関する取り組みを、その他のDE&Iの取り組みにどのように活用できるか、について話が進みました。この点を検討するにあたり、まず前提として知って頂きたいのが、DE&Iを推進するうえで重要な、「構造的不平等」の存在を認識する、という視点です。

太田 由紀 Yuki Ota

「構造的不平等」とは、社会の構造や枠組みは、まずはマジョリティが活動しやすい・能力を発揮しやすい形で作られていて、マジョリティは「最初から与えられている自分たちの“優位性”」に気づかない、また、マイノリティも“活動しにくさ”を感じることがあっても、それは「自身の能力や努力が足りないからだ」と思い込んでいる、ということです。つまり、「エクイティ」とは、この構造的不平等に気づき、考慮したうえで、全員が活躍のための機会を平等に得られるようにするためのリソースを与えることであり、ただ単に、同じリソースをみなに均等に与えることではありません。この構造的不平等を認識したうえでDE&Iを推進する際に、LGBTQに関する取り組みがどのような点で参考になるのでしょうか。

中島 潤 Jun Nakajima

「構造的不平等に気づく」という段階と、DE&I推進のために「何ができるか」という具体的な取り組みに移行する、という2つの段階があったとして、そのどちらにおいてもLGBTQを切り口に取り組むことが可能です。例えば前者であれば、LGBTQ当事者の抱える悩みや問題への理解を深めることによって、マイノリティの課題はマジョリティからは認知されにくい、組織的に対処すべき課題として扱われにくい、ということに気づくことができます。見えにくい・理解されにくい状況にアプローチする際の参考になるでしょう。

マイノリティである、あるいは不便さを感じている人は構造的不平等に気づきやすい、ということについて、例としてよく言われるのが、「教室の前に座っている人は黒板が見やすく、先生の話も聞き取りやすく、授業にも集中できる。でも、後ろに座っている人の方が全体像は見えやすい。前に座っている人は自分とその前のみが見えている、後ろの人は、教室の広さ、座席ごとの黒板の見え方、座席の配置など、構造が見えやすい。つまり、後ろに座っている人が不便さを感じているマイノリティだとすると、後ろの人≒マイノリティは構造の課題に気づきやすい」ということです。このようにLGBTQへの取り組みは、他のマイノリティの声を取り入れる環境整備の際にも、参考にしていただくことができると考えています。

DE&Iにおけるテーマは様々ありますが、1つの取り組みを他でも応用することで、個別に対応していた施策に相乗効果が生まれ、結果、DE&I推進がより加速していくのではないでしょうか。

取り組みが進まない企業で大切なことは、いかに自分事にすることができるか、ということ。

当社が企業様のお話を聞いていて感じるのは、DE&I推進にしっかり取り組んでおられる企業様とそうでない企業様との間に、すでに大きなギャップがあるということです。そのギャップを埋めるために、取り組みが進んでいない企業には、どのようなきっかけやアプローチが必要か、という太田の問いに対して、中島氏は次のように述べました。

中島 潤 Jun Nakajima

取り組むきっかけやメリットが分かれば、取り組みは進むと考えています。「やらなければいけないよね、業界的にも」「他社を見ていても自社は遅れている感じがする」といった同業他社の動向は、会社として取り組む際の、大きなきっかけの一つになると思います。きっかけを受けて「どこから、どのように始めるか」については、例えば今回のようなセミナーやLGBTQに関する映像講座なども、その一歩として活用いただけると思います。

また、LGBTQについて、「自分には関係ない」「うちの職場にはいない」と思っている方へのアプローチの仕方、という点では、テレビやパソコンといった画面の向こう側の話ではなく、自分にとっての身近な誰かの話かも、という温度感の伝わる情報をもとに、実感することが大切になります。「LGBTQという単語は知っているが、そういう人に会ったことはない」と言われることが多くありますが、単語を知っている状態と、顔を知っている誰かのことを考えている状態では、頭や心の動き方が変わってきます。ですから、「LGBTQに対して何かしなくてはならない」ではなく、「一緒に働くこの職場の仲間のために、あなたにできることがある」と実感して頂けるように導き、自分事にしてもらうことが重要であると考えています。

「LGBTQからD&Iを考える」

サイコム・ブレインズの学習プラットフォーム『ビジネスマスターズ®』に搭載されている映像講座「LGBTQからD&Iを考える」

何か「してください」ではなく、「すべての人にとって働きやすい職場とはどんなところか?」という問いから考えて、すぐにでもできることがあれば、やってみよう。

最後に太田が問いかけたことは、DE&Iを推進し、一人ひとりが生きやすく、活動しやすい職場にするために、LGBTQに関する取り組みを通じてできることは?ということでした。中島氏は次のように提言しました。

  • ① 社内への働きかけ方としては「LGBTQの人のために何かしてください」では自分事にならない。これを「あなたにとっても働きやすい組織とはどんなものですか?」「一緒に働く多様な人のために、私たち一人ひとりができることはどんなことですか?」という問いかけに変えてみる。
  • ② 自分事として考え、実際の行動に移せるようになるきっかけは、「自分が行うことが結果として自分自身の働きやすさやメリットになって返ってくる」と実感できるような体験をした時。
  • ③ まずは自分の中にある「多様性」に目を向けて、LGBTQに限らず、様々なダイバーシティの課題と横並びで、「すべての人にとって豊かに働ける職場とはどんな所か」を考えてみる。これなら、個人でもすぐにでもできる。

先にご紹介したReBitとサイコム・ブレインズが共同開発した映像講座はもちろん、実際に取り組みを進めるために有用な研修プログラムもございます。LGBTQの取り組みやDE&I推進の効果的な一歩を踏み出すためのお手伝いができればうれしいです。どうぞお気軽にお声掛けください。

  • 安田 絵理 Eri Yasuda

    安田 絵理Eri Yasudaサイコム・ブレインズ株式会社
    コンサルタント

    法政大学経済学部卒業後、長瀬産業株式会社へ入社。日系自動車メーカーをクライアントに、提案型営業および海外生産拠点のための現地サプライヤー開拓に従事。その後、株式会社アデランスにて海外店舗の経営管理に携わる。それらの経験を通して、女性が働く環境や心身の健康など、日本企業の人と組織のあり方に課題を感じ、哲学、組織心理学、心理療法学などを学ぶ。サイコム・ブレインズに入社後は、組織風土変革、ヒューマンスキル向上、営業力強化など、様々なテーマの研修プログラムの企画に従事。多様性を喜び、個の特性を活かして自分らしく働くことができる組織文化の醸成をライフワークとし、Employee Experience(従業員体験)、心理的安全性、メンタルヘルスなど、社員の心にフォーカスした効果的な研修プログラムを開発すべく日々探求している。個人としてセラピスト、カウンセラーとしても活動。

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