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イベントレポート

2022年2月18日開催オンラインセミナー「コロナ禍における営業KPIの効果的な運用~プロセス分解、指標設定、メンバー育成の事例紹介~」 問題提起:営業は「結果」だけ出せばそれで良いのか?!

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2022.03.02
小西 功二 Koji Konishi
小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

サイコム・ブレインズでは、2022年2月18日のランチタイムにオンラインセミナーを開催いたしました。テーマは「コロナ禍における営業KPIの効果的な運用」で、当日は営業部門のマネジメントやトレーニングに携わる30人超の方々にご参加いただきました。あらためて御礼申し上げます。本レポートでは、オンラインセミナーの内容をベースに、効果的な営業KPIの設定と運用の重要性についてあらためて解説いたします。

イベント概要

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個人の裁量に任せていれば結果を出せる時代なのか

営業は「結果」だけ出せばそれで良いのか。この答えは否となります。まず大前提として、コンプライアンスが重視される現代において「プロセス」を問わない企業はないでしょう。加えて、VUCAな時代、すなわち多様化が進み、複雑性が増すビジネス環境において、変化のスピードも振れ幅も大きい中、先行きを何とか見通しながら営業活動を進めなければならない、極めて難しい現代にあって、「営業は結果だけだせばよい」というかつて聞いたフレーズはもはや牧歌的な印象さえあります。求められるのは「営業現場での迅速かつ柔軟な意思決定」あるいは「正解が分からない中、仮説を立てては実行し、検証しては素早く軌道修正する戦略性」となります。つまり「プロセス」が重要なのです。

一方で、営業マネジャーのプレイング化でOJTに割ける時間は消滅しつつあります。かつてのように、手取り足取り指導することは困難です。加えて、追い打ちをかけるようにコロナ禍によるリモートシフトで、プロセスが益々ブラックボックス化しています。こうした時代にあって、合理性を欠く根性論や精神論ではZ世代に代表される若い人材を育成できるはずもなく、下手をするとハラスメントにもつながりかねません。

要するに、もはや個人の裁量に任せて結果が出る時代でもないし、そうすべきでもなくなったのです。営業プロセスを丁寧に見て、戦略・戦術を機動的に打っていくことの必要性と重要性は益々高まっていると言えるでしょう。そこで、プロセスを見る指標としての営業KPIは、もっと着目されてしかるべきと考えます。

なぜ、多くの企業で営業KPIが機能していないのか ~大切なのは営業プロセスの合理的な分解

弊社が研修やコンサルティングを通じて企業の営業部隊の実態を垣間見る限り、効果的に営業KPIを設定し、運用できている企業は残念ながら極めて稀です。例えば、プロセスを適切に管理するための指標としてのKPIであるはずが、結果を管理する指標(KGI)にすり替わっていたり、設定されたKPIを頑張って追いかけていても最終的な営業成果につながっていなかったり、その割にそうした成果につながらないKPIがやたらめったらと数多く設定され、その集計と報告に営業現場もマネジャーも追われて疲弊する、といった現実を数多く目の当たりにしています。

あるいは、活動の量を管理するKPIばかりが設定されていて、活動の質を管理する発想が欠如していたり、ある特定の営業プロセスだけにKPIが集中的に設定されていて、他のプロセスには目が向いていないというケースも少なくありません。

これらの問題の全てが、そもそも「営業プロセスが合理的に分解できていない」ことに起因していると、私は見ています。

ターゲット顧客へのアプローチが開始されてから、受注・成約に至るまでの一連の営業活動を、大雑把過ぎず細か過ぎず、ちょうど良い頃合いでプロセスに分解し、かつそれぞれのプロセスにおいて「量を測るKPI」と「質を測るKPI」を設定することで、これらの問題は解消できます。

KPIを「量の測定」と「質の測定」に分けて設定・管理することの、マネジメント上の意義

営業は、成約や受注に向けて、お客様に対して様々な申し入れ、お声掛け、お誘い、提案を行います。しかし、それらの営業側のアクションを受け入れるかどうかは、お客様の意向次第です。Yesもあれば、残念ながらNoもあり得ます。このように、申し入れから受注までの各プロセスで営業が仕掛けるアクションの数が「量を測るKPI」であり、仕掛けたアクションをお客様が受け入れてくれる確率が「質を測るKPI」となります。

当然、受注を積み上げたければ、ある程度の量のアクションを起こしていかなければなりません。ただし、そのアクションの質が低ければ、お客様からYesは獲得できず、営業プロセスは前進しません。つまり受注には結びつかないのです。そのため、営業マネジャーは個々の営業の活動を、量と質のKPIを通じて把握し、適切に支援する必要があります。例えば、特定のプロセスでいつもつまずき、受注が上がらない営業に対しては、そのプロセスに同席し、直接支援することが考えられるでしょう。あるいはそのプロセスを前進させる営業アクションの質が高まるように、アドバイスすることも考えられます。

また、KPIを個々の営業単位で集計して見るだけでなく、営業部隊としての平均値を集計して見ることで、組織課題が浮き彫りになるかもしれません。「ウチの営業はクロージングが弱いんだよなあ」という良くあるマネジャーの主観的な嘆きに客観的な根拠を与え、トレーニングすべきポイントを把握することができます。あるいは、重要な営業プロセスを強化するために、そのプロセスにおける「質のKPI」が高い「精鋭」を選りすぐって特別部隊を編成し、そのプロセスに特化して活動させる、という営業戦略が立てられるかもしれません。

大事なことは、量だけなく質も丁寧に見ることであり、そのためには質を測るKPIの設定が不可欠です。しかしながら、質を測るKPIが少ない、または欠落している企業も少なくなく、それはすなわち、お客様の意向を軽視、あるいは無視した営業活動を展開する企業が少なくないことを意味しています。なぜなら、質を測るKPIを決定するのは、先に述べた通り「お客様側の意向」だからです。

客観的裏付けがあれば、営業は目標数字にコミットし、組織に対するエンゲージメントを高めることができる

質を測るKPIが記録され、集計されていれば、営業の力量は一目瞭然となります。そうすれば、個々人の営業の力量を見極めたうえで、実現可能な数値目標を設定することが可能です。最終の目標数字を、最終プロセスから順にさかのぼるように、それぞれの質を測るKPIで割り戻していけば、各プロセスにおいてどれぐらいの活動量が必要か、計算することができます。そうして計算された各プロセスで必要な活動量をじっくり眺めることで、数値目標が適切かつ現実的かを検証できるのです。

このように、緻密な計算をしたうえで、営業マネジャーは各営業との丁寧な面談を行い、年間の目標数字の合意を得る必要があるのではないでしょうか。こうした科学的、客観的裏付けに基づく目標設定がないままに、会社都合で非現実的な目標をポジションパワーを振りかざしながら落とし込めば、貴重な人材は会社に対するエンゲージメントを下げ、最悪の場合は離職してしまうかもしれません。離職しないまでも、モチベーションもコミットメントも高まらないでしょう。つまり、営業目標の達成がおぼつかないということです。

営業活動に携わる全ての人が、やる気とやりがいと感じながらお客様に日々向き合えるように、正しいマネジメントを期待したいものです。営業プロセスを合理的に分解し、管理するために、営業KPIを見直し、活用していただきたいと思います。

  • 小西 功二 Koji Konishi

    小西 功二Koji Konishiサイコム・ブレインズ株式会社
    ディレクター /
    シニアコンサルタント

    神戸大学文学部卒業、名古屋商科大学大学院MBA。中小企業診断士。
    前職では自動車メーカーのコンサルティングファームにて、系列ディーラーの経営改⾰を⽀援。販売台数の増加、利益拡大、赤字経営からの脱却、後継者育成など幅広い支援業務に携わる。2013年、サイコム・ブレイ ンズ入社。顧客企業のパフォーマンスが向上し、「社員が元気になる」様な研修プログラムの開発・提供に力を注いでおり、人や組織がよりよく変化していく事を体感できることが最大のモチベーション。大阪府堺市出身、趣味は映画鑑賞と車の運転。年に一度は10日間の一人旅に出ている。

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