日本の秘書検定は外国人社員にもお勧め
前編では、外国人社員に対する期待や評価制度を明確に伝えて欲しいという内容をお伝えしました。後編では、外国人社員の定着と育成に必要な要素についてお伝えします。
外国人社員の離職を防止し、社員が早く職場に馴染むためには、日本企業の文化、特に働き方を理解することが重要です。そのために、私が経験した中でお勧めのものをいくつか紹介したいと思います。
一番のお勧めは秘書検定のための勉強です。私自身、最初の日本企業に入社したばかりのころは、日本語のメールの書き方さえ分からなくて、メールの冒頭に「いつもお世話になっております」という言葉をずっと繰り返して使ってよいのかどうかも分からず、一日に5件程度のメールを発信するだけでも大変苦労しました。そこで、その時の上司が日本の秘書検定の受検を勧めてくれてました。秘書検定は、日本のビジネス習慣をきちんと理解していなければ答えられないという特徴があります。私は秘書検定2級に合格することができましたが、この内容を勉強したことで日本企業が求める働き方を理解し、学んだ知識を職場で応用することによって、仕事を順調かつスピーディーに進めることが出来るようになりました。秘書検定の内容を学ぶことで、日本のビジネス習慣について高いレベルで習得することができたと言えます。
次に、外国人の社員は異文化に関する研修に対して非常に厳しい目を持っています。外国人社員にとってNGな研修例を挙げると、異文化研修と言いながら、日本の文化を理解して“納得してほしい”ということを目的とするような研修、例えば異文化経験が豊富な講師による講話と日本のビジネスマナーを教えるといった研修です。日本語が堪能で、日本で生活してきている外国人社員にとっては、日本文化についてはある程度理解し、実体験もしていますので「専門性が高い研修を受けさせてもらった」という価値を感じることはできません。むしろ、一方通行な内容で、不公平さを感じます。私が今までに見てきた研修の中で、説明が中立的かつ客観的で、非常に高い専門性を感じたのは、各国の文化を数値で示すホフステードの6次元モデルです。私は、私自身が今までの人生で一番納得した異文化理解に関するフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」とその理論を、グローバル環境で働いているすべての方々に学んでほしいと強く思っています。
そしてやはり、外国人社員が学べると嬉しいのはキャリア開発に対する考え方です。キャリアについて日本人社員は研修テーマや課題として扱われて初めて関心を持つケースが多いようですが、外国人社員のキャリアアップに対する考え方や関心の度合いは明らかに日本人と違います。若いうちから積極的に自分のキャリアを考え始めるので、日本企業はこの点に理解を示し、外国人社員にできるだけ早くキャリア開発の知識やフレームワークを教えるとともに、キャリアプランやビジョンを掴むことができる機会を提供することを強くお勧めします。