去る2022年2月1日、サイコム・ブレインズでは「コロナ禍・リモート環境下における女性リーダーの育成と『セルフ・ブランディング』」をテーマとしたオンラインセミナーを開催いたしました。当日は、公開講座「女性のためのリーダーシップ強化プログラム2022」の講師を務める当社取締役専務執行役員太田由紀が、女性リーダーの登用・育成における企業の直近の取組み状況と抱える課題について、ご参加の皆様からの質問にもお答えしながら紹介いたしました。また、リモートワーク環境下で女性が直面する状況を取り上げながら、組織の中で効果的にリーダーシップを発揮する上でのセルフ・ブランディングの有効性と取組み方について解説いたしました。
イベント概要
「コロナ禍・リモート環境下における女性リーダーの育成と『セルフ・ブランディング』~『女性のためのリーダーシップ強化プログラム2022』体験会~」
リモートワークが普及する中、女性の「認知されにくさ」「自信の無さ」は高まっている
冒頭、太田は、リモートワーク化で社員ひとり一人のより高い自律が求められ、個人への権限移譲が進む昨今の働き方の変化に触れ、このような中、女性をふくむ組織の「少数派」はこれまで以上に同僚とのつながりが持ちづらく、社内の情報へのアクセスが難しくなっていると指摘しました。また、その結果、女性は「孤独を感じやすい」「認知されにくい」「自信を失いやすい」といった状況に陥りがちであり、企業による支援の必要性は一層高まっていると解説しました。
2021年度の当社顧客企業における「女性のエンパワーメント」施策の実施動向は、企業により様々です。「女性のエンパワーメントはもう十分」「ダイバーシティは次の段階に進むべき」といった社内の声をうけ、女性対象の施策を終了する、あるいは、管理職向けのダイバーシティマネジメント研修などにシフトする企業もある一方で、2025年や2030年を見据えて、管理職・経営幹部登用のKPIを上方修正する企業もあるなど、各社の取り組み状況には大きな違いが出てきています。太田は、自社の女性経営幹部層の輩出にフォーカスする企業がここ1~2年増加傾向にある点に触れ、2022年度には経営幹部候補者向けの育成施策がさらに増えるのではないかと予測しました。
女性限定のトレーニングには賛成・反対?…組織の少数派ならではの課題にも目を向けたい
とある企業様より、事前のコメントにて「女性リーダー育成において、まず『なぜ女性であることが大事なのか』について社内を腹落ちさせることが難しい」といった声をお寄せいただきました。女性リーダーの登用・育成に取り組む多くの企業において、その目的・必要性について社内から疑問の声が上がることは少なくありません。また、推進担当者自身も「どのように説得し、働きかけたらよいのか」と悩まれることも多いようです。
セミナー中、「あなたは(あるいはあなたの企業では)、女性限定のトレーニングを行うことに賛成・反対ですか?」と投票を実施したところ、半数が「賛成」と回答された一方、残る半数の方々は「反対」「どちらとも言えない」と回答されました。
次に、女性限定のトレーニングに「反対」「どちらとも言えない」と回答する理由について、実際に企業で多く上がる反対意見から投票して頂いたところ、以下のスライドの結果になりました。
太田は、女性限定トレーニングの必要性を考える上でまず、そもそもの目的である「意思決定層に女性を増やす(=意見の多様性)」について強調しました。意思決定者が多様化することで、組織が様々な状況や変化に柔軟に対応できる、イノベーションが生まれやすくなる、良い人材が集まる等、経営上の様々なプラスの効果が生まれます。
また、新入社員のころから「ライフイベントなどを理由に男性社員と同様の仕事を采配されにくい」「少数派ゆえに、組織の中で認知・評価されにくい」等の状況に置かれた結果、仕事経験の不足に加えて「自分には能力がない」「期待されていない」「リーダーは務まらない」と自信や成長意欲が損なわれている女性社員は少なくありません。このような女性が、社内の男性と同じスタートラインに立つためにも、不足する仕事経験やマインドを補うポジティブ・アクションとしてのトレーニングが必要であると太田は解説しました。
認知されにくい人ほど「自身の戦略的な可視化」が重要
上述のとおり、社内の多数派から認知・評価されにくいという状況は、女性が管理職を目指し、リーダーシップを発揮する上で大きな障壁になります。セミナーの後半では、この状況に対処するスキルのひとつとしてセルフ・ブランディングを紹介しました。
セルフ・ブランディングとは、「リーダーにふさわしい人物」と周囲に認識されるために、自分自身をブランド化し、周囲に知らしめる取組みのことです。ポジションが上がるほど重要となるスキルであり、ある程度の役職者になると無意識下で取り組んでいる方も多いのですが、普段、組織の中で存在感を出しにくく、昨今のリモートワーク環境下でますます周囲との接点が得にくくなっている女性こそ、戦略的・意識的に実践すべきスキルとも言えます。実践により、周囲から「この人はこんな強みを持つ人だ」「こういう仕事をする人だ」とポジティブに認識され、言動が好意的に受け止められる、信頼してもらえる等の効果があり、仕事が進めやすくなります。
では、セルフ・ブランディングを強化するために、どのようなことを行えばよいのでしょうか。セミナーでは、公開講座プログラムの中からワークや映像教材の内容を紹介するとともに「サイコム・ブレインズの人事担当取締役として、自分はどの関係者にどう見られたいか」「その結果、社内で何を実現したいか」といった太田自身の取りくみを例に解説しました。その上で、「自分自身の特性、知らしめたい姿、ターゲット、表現の手段を明確にすること」「一貫性をもち、長期的・継続的に取り組むこと」等のポイントをお伝えしました。
自信が生まれることで、マインド・行動も変わる
セミナー中、「このトレーニングで受講者が変化したと思われる、印象的なできごとはありますか」というご質問をいただき、太田は、とある受講者のエピソードを紹介しました。この方は、すでに管理職の方でしたが、自信のなさや諦めたような言動が見受けられ、その背景には「あなたはダメだ」といったことを職場で多く言われてきた経験があるようでした。研修の場で「おっしゃられているような課題は、この場では見られないですよ」「この強みをもっと見せたらよいと思いますよ」といった客観的なフィードバックを、講師だけでなく、同じ悩みを抱える他の受講者たちからも受けることで、この方の言動は前向きなものへと変化していきました。この受講者の方に限らず、自信のなさ・不安・現状への不満などを抱えた状態で講座に参加するも、セルフ・ブランディングの回を経て、姿勢やふるまいなどが見違える、という方は例年数名いらっしゃいます。
今回ご紹介したセルフ・ブランディングは、6月にスタートする「女性のためのリーダーシップ強化プログラム2022」第2回の学習テーマとなっております。今期も、未来の女性リーダーの皆様が、自身について内省をふかめ、正当な自信を身につけ、ありたいリーダーへと成長する気づきの機会を、志をともにする女性同士の学び合い・交流の中で提供してまいります。皆様のご参加をお待ちしております。